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いきもののはなし

スクアーロに食事を与えるのはザンザスの道楽のようなものだ。
普段の食事はほとんど気にも止めない。
ルッスーリアの食事はおいしいし、ヴァリアーのコックの料理は悪くない。時々作るスクアーロの食事も、見目は粗雑だがまぁ悪くない。
だがスクアーロと、スクアーロだけと一緒に食事をすることは滅多にない。
何故だろう?
ザンザスはそんなことを考える。
そんなことを考える程度にはスクアーロの食事の姿を見るのは珍しいのだ、ということに気がついた。
おかしなことだ。そう、とても。

スクアーロが食事をしている。食べ物を口に含み、噛み砕き、飲み下す。そんな動作を見たことがないわけではないというのに――食べものという意味では近いのかもしれないが、本来は口にするものではないものを同じようにして嚥下する姿はそれこそ、毎晩のように見ているというのに――それがなんだか珍しく感じる。
珍しいと思うことが不思議だ。とても。
スクアーロの食事をしている姿はどこか映画を見ているような気分になる。
何故だろう、と考える。
ああそうだ、コイツは食べながら、食事の内容について感想を言わないのだ。
食事の中身について、たとえばこれが何で出来ていて、どうやって料理したのか、ということについては話題にすることはある。
けれどその料理の味、感触、それらから思い浮かべる自分の感情、楽しみ、記憶、そんなものを自分に語ったことがないことにザンザスはふと気がついた。
ザンザスの耳に、同じレストランで食事をするカップルの、家族の友人同士の、会話がふと入ってきたからだ。

どうしたんだぁ、…ザンザス。

一瞬ボス、といつものように呼びかけようとして、スクアーロは一瞬喉から吐き出す空気を止め、滅多に呼び慣れていない名前を、ひどく丁寧に口にした。


いつ書いたのか覚えていないが一年くらい前に書いた話

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