うそつきな唇 スクアーロがいや、という。いや、いやだ、いやだという。それは本当か、と問いかけても、いや、いやだと繰り返すばかりで、「なにが」「なにを」いや、なのか、その唇は答えることがない。いやなのか。そう問いかけるのにそうだ、と答えないくせに、なにをしてもいや、いやだと答えるのだ。スクアーロ、おまえの口と体はいつも反対のことを言う。俺はどちらを信じればいいのか、おまえはわかっているのか?いやなのか?今度は質問の意味をこめて、強く、よく聞こえるように耳の中に、舌を入れて注ぎ込む。いやなのか?こちらもなにも言っていない。なにを、なにが、いやなのか、なんて。なのに唇はさっきまでの饒舌さをどこかへ隠してしまったらしい、舌が固まって動きゃしない。答えは同じように言えばいい、いや、いやだといえばいい。言えるだろう、さっきまでそうしていたんだ嫌がっていた、背中は固かったし膝はこわばっていた。手をぎゅっと握って、仰け反ったうなじにも力が入りすぎていて、おもわず噛み切りたくなりそうなくらい。いやなのか?昔はすぐに答えていた、いいと答えて抱きついてきた、嫌だって言ってるだろうって顔を背けていた、なのに今は答えられないのか、イエスもノーも言えないのか。黙っていたらいいように解釈するぞ、容赦はしないぞ知ってるだろう。いや、いやだと言ってるくせに、潤んだ瞳を隠さないなら。唇ばかりは言葉だけで、いや、いやだというけれど、濡れた色も赤い色も、それを全否定しているってことを、まだおまえは知らないのか? [6回]PR