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どうしようもない僕に天使が降りてきた

「こんのぉ、クソボスがぁ!」

剣士の握力はハンパない。
部屋中をふわふわ舞っていた羽が、閉められたドアの風力でぶわっと舞い上がる。それはザンザスの黒い髪に、まるで雪のように降りかかり、首元のエクステにからみついて、ひらひらとたいへん美しく、舞う。
廊下を足音が過ぎてゆくのが聞こえる。
普段の無音の足音とはうって変わった乱暴な足取りが、天井の高い廊下をものすごい速度で遠ざかってしまう。

「……っ、………なんだってんだよ、………」

部屋の中は壮絶な惨状。
いい年した男がふたり、加減をせずに喧嘩をすれば、物は壊れる人は死ぬ(二人ともそれを生業とする稼業のトップとナンバーツーだ)三つ数えて目を潰れ…なことになるのは必須だろう。
破けてしまったクッションからはみ出した羽根が、ふわふわと幻想的に部屋の中を舞っている。
ソファはひっくり返り、テーブルは倒れ、その上に乗っていたトレイは投げ出され、カップはひっくり返り、ソーサーはうつぶせに倒れ、ティースプーンが一緒にダンスを踊っている。
壁際のクローゼットの上に飾られたイヤープレートは枠から外れて面を伏せている。
割れていなかったのが唯一の救い、どんな顔をすればいいのわからないでいるこの部屋の主の、困った顔を見ないようにと、全てが顔をそむけているようだ。

「………ドカスが……」

一気にどっと力が抜ける。
怒りは瞬間に鎮静する。
理由は簡単で、自分の過失を認めてしまっているからだ。
昔はそれが出来なくて、いつまでも悶々としていたけれども、ここ数年はそんなことをする余裕もない。
意地を張り合う余裕がないのだ。
完全に、逆転している自覚があった。
自覚をしてしまった。

いまごろになって。

そうだ――つきあう、ということになってからもう十年を軽く越えている。
ザンザスの中ではまだ三年になろうとしているばかりだったけれども、向こうには十年以上が過ぎているのだと――その差が最近、妙に気になっていることにも気がついている。
さっきのことは完全に自分が悪いのだ。わかっている。
ここでじっとしている場合じゃない。わかっている。
なんでこんなに悲しくなるのかもわかっている。わかっている。

わかっている。

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新婚で熟年カップルな27(17)-25に萌えたコネタ

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