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リングの値段

「よっスクちゃん相変わらずいい尻しとるのう」
「ぎゃあああ何すんだこのクソジジィ!」
「いいではないか、スクちゃん、老い先短い年寄りに一時の楽しみくらい与えてくれてもバチは当たらんよ?」
「そういうならとっととくたばりやがれ!」

暗殺部隊の副官の体に触れることが出来てなおかつ殺されない人間は多くない。
しかも触れた場所が腰から下で、あまつさえボンゴレ一の脚線美を誇るとされる(ランキングフウ太調べ)スクアーロの見事な尻を揉みしだくなどというハレンチ極まりない行為をおこなって本人に殺されない人間が、ザンザス以外にいるのだ…ということを、その時初めてスクアーロ以外のその場にいた全員が知った。
しかも相手は九代目より年長者と思われる腰の曲がった年寄りで、どう見ても幹部の誰よりも機敏に動くとは思えない外見だ。(実際そんなに機敏に動けるとは思えない)

なのにそのクソジジィに腰に手を回され、尻を揉まれても、スクアーロは相手を殺したりぶっ飛ばしたりしないのだ。
これは大変珍しい事態である。

「……すげーもん見ちゃったんだけど、」
「明日何かあるのかしら。私まだ死にたくないわぁ!」

幹部が全員呼びつけられて、ヴァリアーのアジトの玄関ホールに揃っているのは、今回の訪問者が特別な人間だからだ。
それは各自理解しているが、それにしてもこの年寄り、只者ではない。

「スクアーロ、いい加減にしてくれないかな。それにこれはボクの客だよ」

ベルフェゴールの頭の上に乗っかっていたマーモンが、ファンタズマを頭に載せたまま、ふわふわと宙に浮いた。

「ようこそ、ヴァリアーのアジトに」
「ふぉふぉふぉお招きありがとう、霧の赤ん坊よ」
「一応ボスに合わせるよ」
「ほほぉ、ザンザスも一人前になりよるのう」
「ジジィは相変わらずジジィだね」
「おまえも相変わらず赤ん坊だのう」
「キミと無駄話してる時間は無駄だよ。とっとと用事を済ませようか」
「おぬし赤ん坊の癖にせっかちじゃのう」
「キミは年寄りは悠長でいけないよ」

そんなことを言いながら、マーモンが宙を舞いながらその人物を導いてゆく。その後ろを杖をつきながら、腰の曲がった老人がついてゆく。

「相変わらず食えないジジィだなぁ、てめぇ」
「ほっほっほっ、それにしてもスクちゃんは美人さんになったのう。ザンザスに毎晩可愛がられているんかの?」
「うっせえぞぉ!」
「ほっほっほっ、仲良きことは美しきかな、だのう。眼福眼福」

ここ最近、スクアーロはザンザスとの関係を揶揄されても、すぐに否定するようなことはしなくなった。今日もそうだ。一瞬の間も開けずに、それを否定するのではなく、それを指摘されたことを責めるようになった。
つまりはそういうことなのだろう。

「すごいわー、ただの年寄りじゃなかったのね」
「ただの彫金職人じゃねーんじゃね?」
「一応ボンゴレリングを作れる唯一の人間ですもの」
「あのジジィ、いったい何歳なわけ?」
「そうねぇ…」

ボンゴレリングは人を選ぶ。それは伝説の話の類ではなく、真実それをはめる人間を、それによって引き出される「ちから」を持つ人間を選ぶのだ。
それがどんな種類のものなのかを、ヴァリアーの幹部たちは身を持って知っている。彼らのボスが身を持ってそのことを証明した苦い思い出があるのだ。
しかし改めて考えてみるとそれって一体どんなものなのかよくわからない。
呪いの指輪の話などよく聞くが、実際にそんなものがあるとは彼らは誰も信じていない。人の思念が指輪に宿るものだとは信じていないが実物は見ている。しかしだからといってそれがどういう仕組なのか知りたいという欲求とはまた別のものだ。
そもそもそんな大層なものを意図的に作ることなんか出来るのか?と考えるのが常識といえば常識だろう。そんなことをこの暗殺部隊に望むのもそもそも大変におかしいことではあるが。

とにかくなんだかわからないおかしな指輪を作ったり壊したり鋳直したり打ちなおしたり出来るというだけですでに化物の類である。それとも魔術師か魔法使いか。年を取らない赤ん坊がいるんだから呪いとかはあるんだんろうが。

そんな怪しい年寄りに、ヴァリアー一の現実主義で守銭奴なマーモンが、大枚はたいて新しい指輪を作るように、と頼んだという話からしてそもそもとんでもないことである。マーモンは本気だ。守銭奴の赤ん坊がマルがいくつも並んだ小切手を切るなんて明日は嵐かなんかか。

「それほど本気だってことじゃないのかしら?」
「流石に金貯めこんでんなー」
「まぁあのジジィ腕は確かだからな」

珍しくスクアーロが素直に褒めるのにベルフェゴールとルッスーリアが驚く。ということは相当彼の腕を認めているということなのだろうか。

「そういえば十年後のヴァリアーリングはタルボじゃなかったわね、作ったの」
「確かルッスと仲よかったデザイナーだったろぉがぁ」
「あー、そういえばそうね。彼、今どうしてるのかしら」
「そのうちどっかで会うんじゃね?」
「そうだといいわねぇ~」
「たっくよぉ」

スクアーロはまだ腰のあたりをさすっている。そんなにボス以外の男に触られたのが嫌なのかしら、なんで外野はうっすら思っている。それともよっぽど昨夜激しかったとか?まさかね。

ボスの部屋に案内した顔の見えない年寄りが、いきなりザンザスの昔話を初め、さらにはスクアーロのことについてかなり踏み込んだことまで突っ込んで聞いてきたあたりで、それがどちらも真実だったことを幹部たちは知るのだが、それはまだ少し後のことだ。

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なんだかやたらと手間取った小ネタでした。毎回スクアーロは尻を揉まれていて、毎回「ほほぉ御曹司はお盛んだのぅホッホッホッ」とか言われてます(笑)。

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