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世界の終わり、幻の光

ぼんやりと書いていたら予想以上に酷いので折りたたみ
週刊少年ヴァリアーの例のアレ
しかも終わってない
エロゲで最初に選択肢ミスって入るバッドエンドみたいな感じ -----------------------------------
左手の中指に嵌った指輪の紋章を確認したときのおののきを、忘れたことはなかった。
これが欲しかったのだ。ずっと。
欲しいと思わされてきたとしても、自分はそのためにここにいて、そうなるために生きてきたのだ。それを嫌だと思ったことはない。
選択肢は選べる人間がすることだ。
意外なことに――そう、本当に意外な、そしてほとんど知られていないことに、家が大きくなればなるほど、金品が増えれば増えるほど、実は選択肢は減ってゆくのだ、ということを、自分が知ったのは、ごく最近のことだ。自分の意識の中では。

「これで念願が叶ったなぁ!」

今まで、顔を見ると感じていた、焦燥も渇望も綺麗に消えていた。
おかしな話だ。
八年の眠り(しかし自分に自覚がないのだから、いまだにザンザスには十六歳の秋から一ヶ月しかたっていないようにしか思えない)が過ぎたのだ、とザンザスに告げた男の瞳は、かつて見ていた薄暗い影がない。
さばさばと頭を振る。
いままで鬱陶しいとしか思えなかった、腰まで届いていた銀の髪は、その分量を八割ほど減らし、小さい綺麗な頭蓋骨にペタリと張りついてふわりと跳ねる程度に、短くなっている。
昨日の夜に髪を切ったのだ。

「ようやくおまえが、ボンゴレの、ボスになるのを見ることが出来たなぁ!」

そういって笑う男の、表情は、ザンザスが僅か数ヶ月前に見たばかりの、十四歳の子供の面影があった。少し背が伸びて、少し声が低くなっただけの顔だった。

「まずは九代目のシンパをどうにかしなけりゃなんねーなぁ! うるせぇジジィたちは俺が地獄に送ってやろうかぁ? なんでも命令しろよ、邪魔なヤツは綺麗に片付けてやるぜぇ」

そういって笑う姿は本当に悪魔のようだ。ついつられて笑みが浮かぶ。おもしろい。九代目の――老いぼれの影に隠れて、ザンザスをさげすんだ年寄りたちの顔が目に浮かぶ。
一人一人を地獄に送り込むことを考えただけで、心が躍る。
かつて自分を辱めた人間たちが、この指輪を見て、どんな顔をするのかを、考えただけでザンザスは、笑いが止まらなくなった。愉快だった。とても。

「そうだな。まずは継承式の前にそれが必要だな。式典会場にドブネズミを入れるわけにはいかねぇ。綺麗に掃除してやらなくちゃな」
「そうだぜぇ! 王座を洗うのが俺たちの仕事だぜぇ、舐められるほど綺麗にしてやるぞぉ」

スクアーロはそういって笑う。楽しそうに。とても楽しそうに。ああ、そうだとても楽しい。とても、とても楽しい。こんなに愉快なことはない。
どんな呪詛の言葉も、耳に入らないだろう。今は。




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いい女だった。確かに、体は一級品だった。素材も悪くはなかった。血統も申し分ない。
畑としての役割も果たしてくれた。よい畑だった。
種を撒いたら予想以上によい収穫があった。
男と女がひとりづつ。
どちらもザンザスに――父親に、とてもよく似ていて、赤い瞳を持っていた。
カルデゥスが7歳、アマローネが5歳になった春、ザンザスは妻を殺した。
不貞を働いたからだった。
正しくは、十代目ドン・ボンゴレの行動に不安を持つ一派のトップが、妻の弟だったからだった。
妻の実家が十代目を引きずりおろす算段をしていたグループの中心人物だったのだ。妻の父は、九代目と仲が良く、生前の約束だったのだが、君がよければ…と、娘を差し出した男だった。
一家は皆殺しにされた。
妻にはかわいそうだったが、自分の寝首をかくかもしれない人間を、自分の一番近くにはべらせておけるほど、ザンザスは馬鹿ではなかった。

実際は別居して、ボンゴレの別荘に連れて行っただけだった。
手を下したのは血気に逸る部下の一人で、妻の弟の部下との不貞をでっちあげ、その証拠も並べて、他の人間の口を塞いだ。ザンザスは何も言わず、その部下に褒びを与えた。
後でヴァリアーに処分させるつもりで、ザンザスはその部下に、たいそう優しくしてやった。部下は大喜びだった。


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砦が落ちたと報告が来たのは数分前だったが、東の空に小さく、炎が上がったのが、小高い丘の上からも見えた。双眼鏡で覗いたその方向の、火の手を上がるのを確認して、スクアーロは樹上から移動した。
数年前から出回った匣兵器は、戦いの様相をまるっきり変えてしまった。ボンゴレの本部はその導入に消極的だったが、ヴァリアーのボスであるスクアーロは、その先見性から、積極的にそれを導入することを推進していた。彼もいくつかの匣兵器を使っているし、部下にはその特性に合わせて、複数の匣兵器を支給している。
雨の守護者の指輪から、青い炎が闇夜に浮かび上がる。それを手元の匣に入れる。翻る鮫の背に飛び乗って、ヴァリアーの城に戻る。そこが落ちるのも時間の問題だが、そこに敵の本体をひきつけている間に、周辺の森に拡散した部隊で背後から、敵の本体を叩く予定だ。
本部とは連絡が取れない。

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