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早めの準備がオススメです

「う゛~~~~~」
「何唸ってるのスクちゃん、子供でも産まれるのかしら」
「まだ臨月じゃねぇ…じゃねぇ! ちょうどよかった、ルッスこれ見てくれぇ」
「何かしら、カタログ? 神戸牛5人分500グラム、新潟産コシヒカリ平成23年度新米産地限定、北海道産たらば蟹300グラム? 九谷焼急須と湯のみ5客セット…うちには足りないわね、何これどうするの、注文するの?」
「ああ」
「日本語のギフトカタログって色が綺麗ねぇ! 品物もたくさんあるし、海外発送ってしてるのかしら」
「対応してねぇと思うぞぉ」
「あら、じゃあなんでこんなもの見てるの。うちに送るんじゃないの?」
「違ぇ」
「じゃあ十代目のところにでも送るの?」
「あっちはもう送るもん決まってるからなぁ。ボスさんが決めてるから俺が口出すもんじゃねぇ」
「じゃあ貴方なにしてんの」
「お中元選んでるんだけどよぉ、全然決まらなくって困ってるんだぁ」
「お中元? これどこに送るの」
「コクヨーだぁ」
「コクヨー? ああ、骸ちゃんのところね」
「むく……あ、ああ、あっちの霧の保護者んとこだぁ」
「なんでまた?」
「あー、ほら、フランがよぉ、あっちに行っただろぉ」
「あー、そ、そうね…。貴方と骸ちゃんがえげつない争いしてたわね。思い出したくないけど」
「まぁなぁ…」
「まさかフランちゃんが記憶喪失になってるなんて、驚いたわー」
「まぁどこまで本当なのかわかんねぇけどなぁ。腐っても霧の術師だからな、あの年齢であそこまで幻術が使えるってぇのはマジ才能あっからなぁ」
「そうねぇ、霧の人の言うこと本気にするわけにはいかないわよねぇ。あのヒトたち、覚えてないとか言っても本当かどうかわかんないもんねぇ」
「まぁなぁ。…ま、こっちに来ても悪くはねぇだろうぉけどよぉ、骸んとこでしばらく勉強したほうがいいと思うけどなぁ」
「まぁ、骸ちゃんは言動がおかしいけど、案外普通の子だものね。言動が変態くさいだけで」
「まぁなぁー。マーモンよりはちゃんと幻術を教えてくれるんじゃねぇかなぁ」
「そうねぇ、いきなり王子のナイフ攻撃にさらされたら、今のあのこじゃ死んじゃうかもしれないわぁ」
「まだあっちのほうがマシじゃねぇかぁ。女もふたり、いるしなぁ」
「そうねぇ…あんまり役に立つようには思えないけど」
「でも女がいるってことはいいことだぜぇ。少なくとも幻術を扱うには、いい勉強になるんだろぉ」
「それはそうね。女を惑わすなんて、それこそ一級の幻術じゃないのかしら」
「まぁなぁ」
「で?」
「だからそういうこった」
「意味わかんないわ」
「約束したんだぁ!アイツと、骸とよぉ!」

そこまで言ったスクアーロはこれで説明責任は果たしたと言わんばかりに、また黙ってカタログをパラパラとめくって眺めているばかり。
ちょっとそれあなたの悪い癖よ。
そう言い募ろうとして、記憶の中に浮かんだ単語を、ルッスーリアは思い出した。

「あら、もしかして、それ」
「ああ?なんだぁ?」
「そういえばフランちゃんをあっちにやるときにそんな話してたわよねぇ?」
「そうだぁ。だから選んでるんだけどよぉ、いったい何にすればいいと思う?」
そういえばそんなことがあった。すっかり忘れていたけれど。
「フランちゃんをあっちに預ける代わりにお中元を送るって、あなた大きな声でタンカ切ってたわねぇ…」
「そーゆーこった。やっぱ無難にくいもん系だろぉなぁー。ジュースの詰め合わせにでもすっかなぁ」
「そうねぇ」

そうとわかれば話は決まった。あっちにいるのは子供ばかり、男女混合なのでドリンクかお菓子。なるべく数が多くて甘いもの、小分け出来るバラ包装のものがいい。手を使わず入れ物に入れる必要のないもの、なるべく冷蔵庫にいれなくてもいいもの…と思いながらカタログを、スクアーロと一緒に見る。

「やっぱりお菓子かしら。小分け出来る、冷やさなくていいもの」
「そうなのかあ?」
「子供ばかりだもの、届いたらすぐに食べたいでしょう」
「そうかぁ」
「数が多くてお腹いっぱいになるものがいいかもしれないわ。男の子がフランちゃん含めて四人、女の子が二人よね?六人で分けられるものだから、最低でも6個以上ないと」
「そんなにいるんかアイツんとこ」
「結構大変ねぇ。あれで案外苦労してるのかしらねぇ、あの子」
「うちんとこより金はねぇだろうなぁ」
「そうよねぇー。子供が多いし、大変だわぁ」

つか子供じゃねぇし、なんでこんな所帯染みた話してんのこの人たちマジわかんない。
何それお中元ってマジそれ贈るつもりなのなんでそんなもんあのクソカエルの保護者んとこに贈らないといけねぇの?
つかその代金どこから出すの? ヴァリアーの公費使うわけ? ボスにその書類回すの? マジで? 
つか何度も思うけどあいつら別に骸の子供とかじゃないんじゃね?

二人の会話のどこに突っ込んでいいのかわからないベルフェゴールとマーモンの、声にならないツッコミが、ソファの死角で繰り広げられていた事を、二人は知らない。

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