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水に映る月はいつも満月

スクアーロ監禁小話のつもりが長いので折りたたみ。全然本編に入ってないってどういうこと…!?  -----------------------------------

スクアーロが監禁されている。

ボスの部屋の中にスクアーロが吸い込まれてからもう二週間が過ぎている。
争奪戦のあとで日本から戻ってきたのはスクアーロが最後で、そのときもやっぱりこんなふうで、スクアーロはボスの部屋に入って出てこなかった。そのときは時々物が壊れる音とかして、時々メイドが呼ばれて部屋に入っていって、欠けたグラスや瓶や汚れたシーツを運び出していたことがあった。
もう十年も前の話だ。
だからそんなことがあったことをみんなとっくに忘れていて、もちろん新入りの幹部はそんなことを全然知らなかった。最近はとても安定していて、ボスは昔みたいに癇癪を起こしてスクアーロを殴ったりしなくなったし、スクアーロは顔を腫らしたり痣を作ったりしなくなった。
だから忘れていたのだ。みんな。多分スクアーロも忘れていたのかもしれない。ボスだって、ザンザスだって忘れていたんだと思う。

白蘭との戦いが終わって、行方不明になっていたボンゴレの日本支部の守護者も十代目も全部下に戻って、イタリアに帰って、行方不明だった(地下に潜伏していたらしい)家光とその妻が見つかって、CADEFのメンバーも数は減ったけれど見つかって、ボンゴレ本部は再建を始めて、ヴァリアーのボスであるザンザスは、一応イタリアの総括みたいなことをするハメになって、いろいろ忙しかった。ヴァリアーもそれはそれで忙しかった。
そんな仕事が一段落したあと、左腕が――もう左手、じゃなかった――半分なくなったのにも大分慣れたスクアーロが、新しい義手を作るために、日本にいるジャンニーニのところに行きたいという話をボスにしにいったのが最後だったような気がする。
「ボスさんに許可貰ったら義手作ってもらわねぇとなぁ! ジャンニーニに作らせるのは不本意だがよぉ、いままで使ってたヤツが死んじまったんだからしょうがねぇ」
そんなことを言いながら、久しぶりにヴァリアーに戻ってきたボスの部屋に入っていったから、そりゃもうその夜はめくるめくナントカが繰り広げられて、ボスは久しぶりにスクアーロを、いやスクアーロがボスを?堪能したんだろうな、と皆が思っていた。
確かにそれはそうだったようで、翌朝みんなで食べていた朝食のテーブルにはザンザスもスクアーロもついていなくて、大分遅くなってから食事を運ぶようにルッスーリアが言い付かって、そのときはスクアーロが隣の部屋で寝ているからってボスが(!)、食事を取りに来て話をしたんだとあとで話を聞いたのだ。

そのままボスもスクアーロも部屋から出てこなくて、昼はともかく夜も、スクアーロが電話もしないのはさすがに少し珍しかった。声が出せないくらいに何かされていたんだろうか、そんなことを考えるくらいにはそれはまぁ、久しぶりだったから、ボスが燃えてるんだろうなーとは幹部連中はみんな思ってた。そんなことは結構いままでにもあって、剣帝100番勝負で長くアジトを留守にした後なんかは、そういうことが数回あったのだ。
一日抱きつくされて声はガラガラ足はよたよた、やつれて疲れてでもなんだか恐ろしく色っぽいスクアーロがようやくボスのベッドから解放されても、しばらくはボスがスクアーロを傍から離さないで、毎晩ベッドで抱きしめて眠って、食事は顔を見て向かい合わせで二人だけで食べて、スクアーロの髪を洗ってやったりしてることは、ここ数年は何回かあったことだった。

だから今回もそんなことなのかもしれないと思っていた。スクアーロは勝手に一人で日本に行ってしまったが、しかしそれは火急の用事であったのだし、少なくともスクアーロが要所要所でボンゴレの守護者たちを守られなくては、たぶん誰か一人くらいはさっくり殺されていたんだろうと思われたからだ。別にヴァリアーとしてはいなくなっても困らないのだが、ミルフィオーレに本部の機構が一時的に停止させられている状態でそんなことが起これば、内紛ではすまされないことになる。それのほうが困る。
しかしだからといってそれを納得できるかどうかというのは別の話だ。ボスの怒りの融点は案外昔からそれほど変化しているわけではない。

けれどスクアーロを監禁するということがそんなに簡単に出来るとは思っていなかった。スクアーロはスクアーロだったので、腕が少し短くなっても全然変わりがなかった。だから少し安心していたのかもしれない。
スクアーロの声を聞かなくなってもう一週間になる。食事はちゃんと毎日二人分届けられて、ちゃんと二人分食べられて戻されている。三日に一度シーツの交換と掃除に入るメイドに聞いても、ゴミは増えていないと告げられたので、どうやらあの部屋には二人の人間がいるのは間違いがないらしい。スクアーロが死んでいてボスの憤怒の炎に焼かれてしまって、影も形もなく腐臭も漂う間もないという可能性も考えてみたが、それにしてはボスは穏やかで静かで、血色がよくてよく眠れて起きているようだ。
スクアーロがいないのにそんなに顔色がいいボスは滅多にないので、幹部たちは皆、スクアーロはまだ生きているのだと結論付けることが出来た。
けれどスクアーロの声も姿も誰も見ていない。幹部は誰も話をしていない。メイドでさえ、執務室までは入れるが、寝室には入れないらしいのだ。
寝室にはカーテンがかかっていて、外からも見えない(もともと寝室はヴァリアーのアジトでもっとも外から見えないところにあるので、上空からヘリで襲いでもしない限り中を見ることは出来ないのだ)。

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という話を去年の10月に出そうと思ってました……。

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