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灯りをつけましょぼんぼりに

緋毛氈の上に引き倒す体があまりに白くて、それがどうにも小気味良い。
衣擦れの音がする服というものは知っていたが、これはザンザスが聞いたことがあるどの衣服とも違う音がする。何かが、そう、きしむような、ささやかな、しかし耳に残るような、音。
きしゅっ。
見た目はひどく硬いように思われるその衣服は、しかし実際は驚くほど掌の熱に馴染む。どうやって身につけていたのか、知るまではさっぱりわからなかったが、実はボタンもファスナーも紐もないと知ったときの驚きは、そう、いかばかりか。
それを今、スクアーロも味わっているのだろうか?
「おいおい」
「なんだ」
「なんで脱がし方知ってるんだぁ…?」
「着方を見てただろう」
「もう一回着られるのか? これ」
「知るか」
そう言いながら薄い体を幾重にも包んでいる布を取り去ることに専念する。動作自体は単純で、洋服が上下に脱ぐ構造だとすれば、これは前後に――前を開いて後ろに抜く、を繰り返すばかりの構造であるようだ。
それが思いの外楽しい。細い紐を巻いただけで形がなせるのは、摩擦と隙間の綾であるものなのかと思いながら、脇の下に手を入れた。
「どうしたんだぁ? 急に」
「さあな」
絨毯によく似た色をしているこれは、つまりはフェルトと同じものだ。その下は植物性の繊維で編んだものが敷いてあるだけ。背中が痛いと言われるのは必定で、しかしこの赤と白と綾なる衣服のコントラストは目だけで味わうにはもったいないと思われた。
「赤いのでも見て、興奮したかぁ?」
蓮っ葉な口を効くこの男こそが、内実そうなっていることを、知らないとでも思っているのだろうか。知らないのか、赤と白とのコントラストこそが、ザンザスを興奮させるものだということを知らないのか? 本当に?
キュッと絹の帯が鳴いて、裾を割ると灯りの下、あらわになる太股の白さが一層際立った。あまりに清廉すぎて、かえって卑猥にすら感じる。
「そうだな。てめぇがな」
知ってるとでもいうようなえらそうな顔をして、スクアーロが笑みを作る。これから情事を行うという顔ではない。
「そうだぜぇ。知らなかったかぁ?」
手の中で鳴く布地の音が少し高くなった。これはこれで悪くないものだ。

部屋の隅には腰まである台にすえられた、人形がじっとこちらを見ていた。数が多い。揃いの一団であるらしい。
それを見ていると、下から手を伸ばして、同じようにザンザスの着物を脱がしているスクアーロが、不満そうに襟を引く。
「気になんのかぁ?」
「いや、……」
「見せておけよぉ」
「見るわけねぇ。人形だ」
「それもそうだなぁ」
スイッチが入ったスクアーロは実にわかりやすい。わかりやすいことはいい。疑わなくていいからだ。

緋毛氈の上でもう一度、スクアーロがにやっと笑ってキスをしてきた。





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