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花を飾ろう一面の花を

大変薄暗い上に後味が悪いのでたたみます。
死にネタやマダオなボスや駄目な鮫が駄目な人は見ないようにしてください。
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「見つかったのは偶然…というのは嘘だけれど、でも偶然…といえば偶然。春だったし。
野草を取りに山に入った、山一つ向こうの農家の人が見つけたの。……話は知ってた、というより連絡はあったみたい。見つけたら連絡しろって。まさか連絡できないことになってるとは思ってなかったと思うけど。……処分? したわ。 見ちゃったもの。 普通の人にはもったいないわよ、あんなステキな死体」


「うまいことやったなって思ったかなー。顔潰したのってすげーよな。意味わかんない? 独占欲だよ、独占欲。だってもう、誰も顔見ないじゃん? 見られたくないんだろうし、見られたくなかったんだろ。死んだ後の顔なんか見て何になるの。自分じゃ見られない恋人の寝顔なんか、誰にも見せたくないのが人情だろ? 違う? 王子なんか変なこと言ったかな?」


「うん、なんかね……体は綺麗だったよ。そのまま。全部そのまま。検視はね…したよ。一応。……うん。残ってた。綺麗になんかしなかったみたい。一回じゃなかっただろうって。うん?そう。報告書にね。べったり……痕もね、すごかったって。……違うよ、お互い。本当。そうだよ。……おかしい? そうかな? だってそうじゃない? あんな見事な八重歯に齧られたら、気持ちよさそうじゃない? そう思わない? 刃を握ったり、人を殺す手ですがりつかれるのってたまんないだろうなぁって思うよ。あんな人にすがりつかれて、爪立てられるのって凄いことじゃない? 気持ちよかったんだろうなぁ、って……うん、……うん。ちょっとズルいよね」


「ずっと顔を見てないから、最近のは知らない。見せてくれなかったから。仕舞ってた。大切に、大切にしてた。隠してたのかも。何からだろうなぁ……誰から? ああ、それは判ってるかもしれない。隠したかったのは本人からだろうな。世界と戦おうとする本人から、かくしておきたかったんだろう。そんなものと、もう戦って亡くなるくらいなら、戦わなくてもよかったんだろう。俺にはわかんないけどね」


「着物を着せた写真を送ってきたんだ。着物?ボクが誂えたんだよ。着物だったら、サイズが変わっても着られるでしょう。痩せたはずだし、動けないはずだから。着物って便利なんだよね、体に巻きつければいいだけだから、一人でも着られるんだよね。帯だって締めるの、男物だったら楽だし。ボタンはめなくてもいいからね。……そりゃあね。だって着てもらいたいでしょう、普通、せっかく贈ったんだから。全身を隠すからね、見えないんだよ、いろいろ。まぁでも、送ってくれたのが義理でも、筋は通すんだなって感心した。馬鹿だな、って思ったけど。そんなもん捨ててどっかいっちゃえばよかったのに。売れば当面の金にはなるかってね。よくあるでしょ、そういうの」


「死にたがってた。ずっと。一刻も生きていたくないんだろうと思ってたことが、……あるんだろうな、とは思ってた。そんなに殺したいのかな、って思ったこともあったかな。大切にしてるものの大切なものを憎んで壊したら、大切なものが死ぬってわかんないんだろうな。そんなこと誰だってわかると思ってた。…俺は、そうだな、ちゃんと教えられていたんだろうとは思う。大切にされていたからなぁ。今はわかる。わかるから、どっちもわかる。そうしないで欲しかった願いも、そうしたかったってことも、そんなことするなって気持ちも。自分より相手を大切にしすぎるのってのも問題だって思ってた。傾きすぎた天秤棒は折れるからな」


「要求はないよ。そんなもの、もういらなかったんだろうね。限界だったんじゃない。知ってたかって? 知ってたよ。僕たちはみんな知ってたよ。知らない人がいるならそいつはよほどの盲じゃない。ああ、とっくに老眼で白内障で、見えなくなってたんだっけ? 生き地獄を味わうなんていまさらだろ。今は一刻も長く生きててほしいね。そのほうが地獄だろ。どうせ死んだって会えないんだろうし」


「わかんないんだよね。誰がやったのかわからない。やった人は………どっちだろうな。みんな同情してたし、許せなかったんだろうな。残念ながら俺は蚊帳の外。それもまぁ、……恩情っていうか、そんなもんだったのかな。見せてくれなかったし。絶対。一緒に焼いちゃったらしいしな。嵐の炎は高温だから、骨も残らなかったんだって話だ。だから見たのは、最後の、……………」


「花を買っていました。白い花。あるだけ全部、買ってくれました。顔はわかりません。ずっとサングラスをしていたから。手も、黒い皮の……手袋をしていて。服も。
頬に傷があったのは覚えていますけれど。……ええ、車の中に、誰かいたようでした。動いているのは見えましたけど。よく見てません。動いてるのが見えただけで」


「問題はありませんでした。ええ、別段問題はなかったんです。ちゃんと治る、と……。ええ、動きます。ちゃんと。少しリハビリが必要でしたが……、すぐに戻りますよ、と言ったのですが。……いえ、そこまでは、流石に、……時間はかかりますが、無理ではないです、とは言いました。年齢的にも100%無理ではないと、……そこまでは、……いいえ、そんなことはありません。本人は別段、それほどでもなかったのは確かです。ええ、意欲的でした。とても。あんなに熱心な患者はいませんでした」


「お墓なんてありませんよー。だってそうじゃないですかー、墓に入れないでしょー、普通。自殺は大罪らしいですからねー。地獄へ行くんでしたっけ? え、知ってますよ。ミーは師匠のおかげで知らなくてもいいことを知ってますんでー。でもいいんじゃないですかねー、生きてるほうが地獄だって思ってたんじゃないですかー。仏教では六道輪廻、人間道も畜生道も地獄道も、みんな同じなんですよー。普通のカミサマ程度も同じなんですよー。だったら地獄行ったほうがいいんじゃないかって思ったんじゃないでしょうかねー。自分で顔焼いちゃうとか、地獄の獄卒もかくやの行動だと思いますー。ミーは感動しますー」


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