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赤と青の誘惑と困惑

フランとクロームちゃん。事後なので折りたたみ。 -----------------------------------



「クロームねーさん、もう帰るんですかー?」
「うん」
「久しぶりに一緒の仕事で会った弟子に、なんかいうこととかないんですかー?」
「フランは弟子じゃないでしょ」
「じゃなんですかー?」

紫の瞳の少年が、細い体をベッドの上で伸ばして起き上がり、そんなことを呟きながら手を伸ばす。それにクロームは作り付けの冷蔵庫から炭酸入りの水を出して渡す。ベルビュー、青いラベルのそれの口を開けて、少年が裸の喉を上下させた。

「そういえばなんだろうね……」
「というかー、ミーたちって結局、ナニモノなのでしょうねー? 一般的に言ってー、家族ってフツー家族でセックスとかしませんよねー?」
「……しないと思うけど」
「じゃ、ミーとクロームねーさんって家族じゃないんじゃないですかー?」
「姉さんって言ってるくせに?」
「あっ、そうでしたー」

シャツを羽織っただけのクロームが、戻ってきて自分も同じく水を飲む。
薄い細い手足には、けれど二十歳を過ぎた妙齢の女の、甘い匂いが満ちている。
ボリュームは少ないが小ぶりで形のよい胸元、白くぬけるような輝く肌、薄い首筋、丸い肩、ほっそりと伸ばされた二の腕にも、とろけるような魅力が漂ってきていて、男の視線を受け止めるのには何の問題もない。隻眼の顔立ちも、長い睫毛が美しい。二十歳はとうに越えているのに、いまだ少女の初々しさが体中に満ちていて、咲き誇る花のようだ。

「じゃあミーとクローム姉さんって家族なんですかねー?」
「さぁ…わからないわ。私、家族ってよくわからないもの」
「ミーも知らないですー」
「骸さまだって知らないと思う。犬だって千種だって知らないでしょ」
「そういやそうですねー?」
「でもわたしたち、骸さまのもとにいるのよ。骸さまがわたしたちに、生きてていいって教えてくれたの。それでいいじゃない?」
「クロームねーさんはそうなんですかー?」
「そうよ」
「師匠は体ありませんから、セックスできませんもんねー」
「それ何か関係あるの?」
「あるんじゃないですかー、フツーは」
「フツーなんか関係あると思う? だいたいわたしたちみたいな術師に、実体があるかどうかってセックスの行為に関係ないでしょう?」
「そうですかねーっていうのは納得できない気がしますけど、でも実際そうですねー」
「そうでしょ。だって、そこに骸さまがいることと、いないことに違いってある?」
「そうですねー、あんまりナイですねー。師匠、勝手に来るし勝手に帰りますから」
「でしょう」

ごくんと最後の水を飲み干して、細い喉が上下した。

「私の体にも、あんまり意味はないの」
「そうなんですかー? だから姉さん、ミーと寝ちゃうんですかー?」
「だってフランがしたいってベッドに入ってきたんでしょ。ホームシックにでもなったのかと思ったの」
「なるわけないじゃないですかー。そもそもミーにホームなんかありませんよー」
「そうなの?」

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