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Gioisca, rabbia, umorismo e pathos

獣には感情がない。

子供は獣だった。すべてのこともは獣だったが、その子供は特に獣だった。それはそれは鋭い牙を持っているけもので、大きな敵と戦うことを厭わない勇敢な獣だった。
獣は勝てない戦いはしない。絶対に勝てる戦いを絶対に勝てる方法で戦う。そして勝つ。負けることは死ぬことだと知っているから、負けるようなことはしない。奢らない。自分の運命を他人の手に譲り渡さない。獣の血を持ち、獣の魂を持っていたから。

獣が始めてしったのはよころび。勝利を喜ぶという感情を始めて知り、それを快感とすることを知る。子供は獣になる。それを「よろこぶ」ことを知る。知ってしまう。
銀のたてがみの見事な獣はそこで人の感情を知るけれど、それは人のためのものではない。よろこびはわたしのもの、よろこびはひとりだけのもの。よろこびは獣だけのもの、よろこびは自分だけのもの。子供はそれを知る。そして少し人になる。


獣は嵐の炎を見る。始めてみた炎に恐れ慄く。炎は獣の見たことがないもの、人の世界のもの。獣は人の世界を知る。始めてみた炎を知る。
そうして獣は知ってしまう。知ってはいけないものを知ってしまう。
よろこびだけを知っていればよかった、まだ獣でいられた。いられたのに、知らずにいたのに、それなのに。

獣はヒトになってしまう。人の炎でヒトになる。それはプロメテウスの炎、ピグマリオンに吹き込む原始の炎である。
炎が氷を生む。氷はよろこびを変えてしまう。

けれど獣は所詮獣、ヒトに向ける感情を知らない。
炎の原動力がなんであるかを、理解することが出来ないのだ。

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