銀の魚を飼う方法・3 「……俺が、ここに来ないと、もう、スクアーロには会えないのかな?」「会えるようなら会えるだろぉ」「ザンザスも、たまには本部に顔見せてね」「忙しい」「俺が外仕事ができねぇからなぁ」「……そうだったね。ごめん。調整するから」「気遣い無用だ。かえって面倒が増えることになる」「…ごめんね」「日本人はすぐに謝る」そういって、ザンザスは少しだけ唇を緩める。それだけでぞっとするほどセクシーな、男の妖艶な色気が滲み出してくるのがわかる。 「写真を忘れずに受け取っておけ」「うん。……ありがとう」そう言って席を立つ。ザンザスが立ち上がって先を歩く。ドアを開けてくれるのに少し驚いて、隣に立つ男の、赤い瞳を見つめてしまう。「大切にしてね」「長生きさせる」それだけ、唇から漏れたのかどうかわからないほど、かすかな小さい声が耳に入ったような気がする。もしかしたらそれは口に出していったのではないのかもしれない。そうだと思ったのを、そうだと感じた、ただそれだけなのかもしれない。「元気で」それだけ言って一歩踏み出す。見送られて背を向ける。三歩行ったところでドアが閉まる。 吹き抜けの階段を降りれば、玄関フロアで話をしている獄寺隼人の声が、吹き抜けの回廊に響いて聞こえる。健康的な若い男の声が、他愛のない話をしているのを聞きながら、綱吉は喉の奥にぐっと力を込めた。「十代目」見上げる獄寺の髪がキラキラ、光の加減で白銀に光る。目の奥が痛いような気がして、伏せた瞼から、ぽろりとひとつ、涙が落ちた。 [12回]PR