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銀の魚を飼う方法・4

「もういいだろう。出発の時間だ」
「ザンザス」
「ドンはお帰りだ。ハヤトを呼べ」
「じゃあ、その前に、もう一杯お茶を入れて?」
「持ってこさせる」
「ザンザスか、スクアーロが入れてくれないかな」
「それは命令か?」
「お願いだよ」
「……そうか」

 その言葉に、ザンザスが手の中の銀をそっと手放して席を立つ。静かにポットを引き寄せ、それを載せた盆ごと、部屋の一角のコーナーに立つ。冷蔵庫から水を出し、茶葉を捨てて準備を始める。
 流れるような繊細な手つき、踊るように指先が湯を沸かし、茶を量るのをぼんやりと綱吉は眺めた。それも誰かに習ったのだろうか、いつも自分に茶を入れてくれる獄寺の、その手とは全然違うものなのだなと、そんなことを考える。

「ずっと、ここにいるの?」

 何とはなしに聞いてみたくなって、綱吉はその言葉を、向かいに静かに座っている、銀の寵臣に話しかけてしまう。声に出すつもりはなかったというのに。

「あぁ? あぁ、そうだなぁ。だいたい隣の部屋あたりにいるぜぇ。生活に不自由はしてねぇぜぇ、キッチンも風呂もあるしよぉ、何もしねぇで飯食わせてもらって悪いくらいだぁ」
「…それでいいの?」
「いいもなにも、他のことはできねぇしなぁ。……剣でなくなった俺の役目を決めるのは、俺じゃねぇからなぁ。それに、俺は、従うまでだぁ」
「それで、本当に、いいの……?」

 重ねて聞けば、ふっとスクアーロの顔から表情が消えて、瞳の底にゆらゆらと、暗い炎のようなものが湧き上がってくるのが見えた。無表情のスクアーロは、冴えた美貌がいよいよ人ではないように思える。彼等を人は悪魔だというが、綱吉には彼等こそ、世界の理を守るために闘う大天使なのではないかと思われた。

「いいわけねぇだろ。……死ぬよりはマシだがなぁ」
「ザンザスは、………」

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