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罰ゲーム的ななにか

↓のバトンを二日で返答できなかったので一応罰ゲーム的ななにかを。
仔ボス×人妻でなくてすんません。




それら以外はすべて狂気の沙汰


スクアーロはすべてのキスをする。
尊敬のキス、憧憬のキス、憧れのキス、慈愛のキス。まぶたに額に手の甲に手のひらに、頬に鼻に足に靴に、指に唇に耳に鎖骨に耳たぶに、うなじに首筋に亀頭に陰嚢に爪先にキスをする。
凶器が狂気の沙汰を繰り広げる、饗宴の中で踊りながらその身を暴かれながら、それでいて何もかもささげるために、そして同時に貰おうとしてキスをする。
本当はそれはもっと多くの人に向けるべきキス、少なくともそれのいくつかは家族や同僚や友人に与えるべきものであるはずだ。本当ならば、本来ならば、そうするならば、そうならば。
しかし困ったことに彼はそのすべてのキスをたった一人の人間にしかしない、その人間のためにしか唇を許さないのだ。長く伸ばした銀の髪、透けるような白い肌、弓矢のようにしなやかな腕と足、風の中にたつ一本の木のような背中、表情がないと妙に綺麗な、整いすぎて人間ではないような容貌も含めて、彼はそれをただ一人の人にしか捧げない。
それは重くないのか、つらくないのか、苦しくないのか? 
彼ではなく、彼にそれを捧げられる人のほうがそれこそが、重くないのか辛くないのか、そう余人は益体もないことを考えてしまい、時に進言して彼の不興を買い、彼がすべてを捧げたあるじの怒りを買うことになる。
無駄なことだ。
それは無駄なことなのだ。他人のやることは止められないのだ、いつだって、どんなことをしても本当の意味でそれは無理なのだ。

スクアーロのすべてのキスは毒のように甘く、蜜のように苦く、愛のように醜く、哀れみのように暖かい。正義のように恨めしく、怒りのように清々しい。
それを受け取るのは誉れと同時に呪い、悪魔の囁きと同時に新星の祝福でもある。
孤高の王だけがそれを受け取れる。
なぜならその重い、強い、熱いキスでなければ、孤高の王座を暖めることが出来ないし、王座の椅子をとどめておくことが出来ないし、そもそも王座を守れないからだ。
そんな王座に座っているからこそ、その王はスクアーロのキスを受け取れる。
キスを受け取るのは麗しい王の役目。王はそのキスを重いなどとは思わない、なぜならそれが彼の玉座をとどめている重石の一つ、王座の据えられた王城の礎の一つだからだ。

ちゅ、と音とたててスクアーロの唇が離れる。
薄くて白い唇、キスの一瞬だけ赤くなるのが見えた。
ザンザスは少しだけ目を細める、その唇を眺める、そのキスが終わるのを感じて、ゆるやかに開いた唇をそっと離す。絡み合った舌が離れる最後に名残惜しいように交わされるキス、どんなものも互いの間をつなぐ甘味になっている。糸をたどる、濡れるあごをつかんでたどった先の唇にもう一度近づこうとして、頭の後ろの手に止められた。
「ボスさんはキスが好きだなぁ」

それはこっちの台詞だ。

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