バカップルがゆく再び・春のキャベッチュー 4月22日はよい夫婦の日!!ちゃんと更新してる精神的余裕がないので書きなぐっておきます。あとXS城受かりました!やった!!うれしい~~!!オンリーじゃないと出せないような本(って何)を出したいなぁ…(だから何だよそれ)。 愛妻の会開催の「キャベツ畑のまんなかで世界の中心に愛を叫ぶ」というイベントがある。長い名前なので「キャベッチュー!」と略されているそれの、去年の秋にとんでもない飛び入りがあった。今年は春先に開催することになった。いい夫婦の日――は1月23日だが、よい夫婦の日――ということで、4月の23日にもすることになったのだ。春まだ浅い山の中、地平線まで続くんじゃないかと思われる、なだらかな丘の上に台を設置して、その日もかなり盛況だった。テレビやラジオで取り上げられるようになり、「キャベッチュー!」もかなり知名度があがってきている。今日もテレビの取材が地元の放送局と在京の局が二つ、ニュースとバラエティが三本入っていて、かなりにぎやかになっている。こうなると露天で農産物を売る人が出てきたり、町役場でテントを張って、地元のPRをしてみたり、農協が農産物のチラシを捲いたりといろいろ忙しい。当日飛び入りも大丈夫だというのをPRして看板を立てていたボランティアスタッフの男は、背後から声をかけられていつものように振り向いて――そこでしばし、固まった。「これは飛び入りできるのかぁ?」見上げるほどに背の高い、ものすごい美人が声をかけてきた。さらっさらの銀の髪、これはなんで出来ているのか一瞬惑うほど、綺麗でつややかな長い髪を腰まで伸ばした外国人。「い、Yes」「だってよぉ」「申し込みしてこい」「出るのかぁ?」思わす英語で答えた後で、その後ろに同じように、素晴らしく背が高くスタイルがよく、とにかくかっこよくコートを着こなしている男がサングラスをかけて立っていた。こちらもまた、目が覚めるようなスタイルのよさで、まるでグラビアから抜け出してきたかのような美しさで、思わずどこかの芸能人かと思ってしまったほどだった。とにかくもう、オーラが違う。全然、まったく、違っていた。最初だけ日本語で少し話をしていた彼等は、そのまますたすたと本部へ向かってゆく。足がおそろしく長く、スタイルがものすごくよく、歩き方が全く日本人とは違っていて、後姿が信じられないほど色っぽい。「なんだあれ…」つい、そう呟いてしまうほど。二人はとにかく目立ちまくった。順番を待っている人たちはひとところにまとまって、周りの人と話をしたりしているのだが、あの二人だけは少し離れて、二人だけで何かをぼそぼそ、話続けている。テレビ局のスタッフが何度も近づいては交渉して玉砕しているのが見え、そのあしらいっぷりまで見事で、ちらちらと目で追ってしまうスタッフも幾人かいた。美人が黒い手袋を嵌めた手で、NOと言いながら手をあげ、パートナーの前でキッとにらみつければ、余人はまったく、立ち入ることは出来ない。もちろん参加者も不審そうに遠巻きに眺めているばかり、勇気を出して声をかけられるような人間は全くいない。スタッフが時々声をかけ、飲み物を配ったりなんだりしているのには普通に答えているというのに、どうにもなぜか、問いかけ難い雰囲気。それにしても見事な組み合わせだ。黒髪の美丈夫と銀髪の麗人、グラビアかモデルかそれとも名のあるどこぞのセレブかと思うほど、それはそれは見事なふたり。しかし始まればもうみな自分のことが先で、恥ずかしがりながら大声で、パートナーへの愛を叫ぶ――思い思いの言葉で、恥ずかしいので声が裏返って、それでも思いを伝えようとするその姿は必死でけなげで美しい。抱き合って感動する夫婦も多く、それを撮影するテレビ局のスタッフもどこか、楽しそうで嬉しそう、ほのぼのとした雰囲気で、楽しげなままイベントは進んでいた――のだが。番号を呼ばれてあの二人が叫び台に向かってゆく。夏はキャベツ畑になるここはまだ、一面ただの地面だが、そこに設置された台に「叫び台」がある。少し離れたところにパートナーが立っている場所があって、そこで待っているパートナーへ届くように、叫んでください、というのがイベントの趣旨、なのだが。叫び台に乗ったのは銀の髪の麗人のほうだった。スタッフに叫ぶ方向を指示されて、あっちか、と顔を上げる。その先を、パートナーだろう黒髪の美丈夫は静かに歩いてスタッフに位置を示されるが、それを無視してさらに少し、遠くに離れて歩いていってしまう。「こんなに離れていいんですか?」「すぐにわかる」そう言って男はサングラスを外して、スタッフにさらりと言い放つ。真っ赤な目に驚くのと同時に、その瞳の迫力に、スタッフも一瞬息を飲んだ。振り向いてすっと立つ、その姿勢も様になりすぎて、なんというかもう、ただひたすらため息しか出てこない。黒いコートを長身にまとう赤い目の男の背後に、まだ山頂に雪を被った山が見え、白樺の木立がアクセントになって、それこそ一枚の絵か何かのよう。出演交渉をすべて断ったその男がふっと台の上の麗人を見つめる。スタッフに促され、その人は手を輪に丸めて口にあて、すっと息を吸い込んだと思ったら―――。近くで撮影していたスタッフが間違いなく計器が壊れた。数人確実に意識がなくなったに違いない。録音マイクを掲げていたスタッフは、それを取り落とさないようにするのがせいいっぱいで、カメラマンも思わず顔をそむけてイヤホンをむしりとった。キャスターも勿論だ。台の後ろにいた本部スタッフと、叫び終わって抱き合っていた人たちだけは平気だった。空気を震わせるスクアーロの渾身の愛の叫びを、割合普通に聞くことが出来た。そして普通に『外国人はストレートだなぁ』という至極まともな感想を持った。おそろしいほど静まりかえったあたりを全く顧みず、終わった、と肩から力を抜いてスクアーロは台を飛び降り、ザンザスのところへ走ってゆく。畑の真ん中でそれを手を拡げて待っている黒髪の男の元で走って飛び込んでゆくそのシーンはまさに、どこかの映画のラストシーンもかくやの麗しさ、先ほどの告白の内容も含めて、よく出来た恋愛映画のクライマックスを目の前で繰り広げられているかのよう。「どうだぁあ゛あ゛ボスゥ!!!」「カスにしてはよくやった」お約束のキスシーンまでついてきて、(当然それは一回こっきりではなく、軽く唇を触れ合わせるだけでなかった。もちろん!)かたく強く抱き合ったまま、肩と腰に手を回して立ち去ってしまうその後まで、ひたすらその場にいた全員が、二人に呑まれて呆然と、ただただぼーっと一連の、その動きを眺めていた、だけ、だった。そうしてその場にいた全員は、耳を劈く大音響でこっぱずかしい愛の言葉を叫んだのが、正真正銘の男だったということを、声を聞いたにもかかわらず、すっかりすっぱり記憶から消去してしまっていた。人間、都合の悪い記憶は改竄してしまうものなのだ。記憶の容量を遥かに越える内容の記憶でも、それは全く同じことで――まったく映像に残っていないあの二人のことを、その場にいた全員、きっと一生忘れられないに違いない。その声とその内容だけは、確実に。「暗殺部隊がそんなに目立つことしてどうするの」「去年も行っておもしろかったからなぁ!」「…あんなこと叫んで恥ずかしくないの??」「俺がボスを愛してるっていうのがなんか恥ずかしいことかぁ?」「ザンザスもなんとか言ってよ!」「カスが一番声が大きかったな、流石に。そこは誉めてやる」「そこなの!?」「好きな相手を好きだっつってなんか問題あるのか?」「日本人はシャイだなぁー」ああ、外国人ってこれだから…!! 綱吉はすでに何度目になるかわからないなぁと思いながら、頭をかかえてうんうん唸った。この話は実際のイベントや催しや団体とは一切関係ありませんのでよろしく! [2回]PR