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年の最後のごあいさつ・2

「幻術士を鍛えるのは幻術で何ができるのかを覚えるしかないのさ」

 マーモンの言い方にスクアーロは思いあたるところがあるのか、そうか、とつぶやいた。

「スクアーロはわかるかな」

 今少し言われた意味が分からないルッスとベルが同時にスクアーロを見る。

「そうだなぁ、おまえが言おうとしている意味はわかるぜぇ」

 幻術はもともとがそこにないものをあるように見せる技術だ。マーモンはベースの超能力からの意識への介入なので、分類的に大雑把に言えばテレパシーに近いものである。
 それに反して、六道骸の幻術は同じ超能力に分類されるだろう能力でも、テレパシーのような相手の意識を読む方法ではない。それはどちらかといえば催眠術に近いのだ。相手の意識に入る方法としてのアプローチは同じだが。

「ボクの幻術は相手の意識を利用して、そこにあるものを拡大して幻覚や幻視を引き起こす能力だ。でもフランの持ってる能力は、どちらかといえば「あるものを利用する」のではなく、「ないものをあるように見せる」力みたいだね」

「それ同じじゃねーの?」

「全然違うよ。どちらかというと――六道骸のほうがボクより、教えるのには向いてるのはそのあたりなのさ」

「それってつまり、相手の嫌いなものを探りだす必要があるってこと?」

 ルッスーリアはあまり幻術士と戦ったことがない。スクアーロが幻騎士と戦った時は、最後に死んだように「みえた」彼の体の異常を、まったく感じることが出来なかったのだ。

「そうだよ。ボクは別に自分で考えてるわけじゃないのさ。相手の心の中にある『嫌だと思っているイメージ』を増幅することが出来るんだ。別に嫌なことに限らないけれど、イメージの原型はなければ難しいね。そのてん、フランや骸は「自分の嫌だと思うイメージ』を相手に押し付けることが出来るわけだ」

「うっわ、メイワクー」

「骸ちゃんってすごーくそういうの得意そうねぇ…」

「得意というか好きだと思うよ」

「納得出来るなー、うわー、クソガエルの師匠だけあってサイアクー」

「どれだけ嫌なイメージを持ち続け、そのビジョンを鈍らせないのかが勝負だからね。それが出来るってことは、さすが復讐者の牢獄で十年過ごしても発狂しない男だよ」

褒めているのか非難しているのか判別し難い意見を言って、マーモンはスクアーロの膝の上で背筋を伸ばした。




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