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赤と青の困惑と思惑

 朝食のテーブルには珍しい先客がいた。

「おはようござい…ます」
「あー、オハヨウ……今朝は随分早くねぇかぁ?」
「夕べから泊まってるのよ、遅くに戻ってきたから。女の子ひとりで帰すには遅かったので泊めてあげたわ」
「そうなのかぁ? 部屋掃除してあったかぁ?」
「しばらく手を入れてなかったから、悪いけど談話室に寝ててもらったの。ここだったら中から鍵がかかるし」
「そうかぁー。ちゃんと眠れたかぁ?」
「…大丈夫。………ここ、とっても静かで、……よく、眠れた」

か細い声で囁くように話す隻眼の少女が、幹部の並ぶ朝食のテーブルの端に場所を作られ、ちょこんと座っている。
こざっぱりとして肌はツヤツヤ、肩は薄く肉も薄く、顔立ちもまるで幼女にしか見えないが、立派に成人した一人の「オンナ」が、独立暗殺部隊ヴァリアーの、朝食の席にいるというのはたいへん、異色なことだった。
この荒くれと異端を絵に描いたような場所に、女が共にいることなど、彼等がここに座るようになってから、ほとんど初めてと言っていい。
他の幹部は準備が出来るのを待っているが、銀色の副官はかいがいしく準備を手伝っている。

クローム髑髏はヴァリアーの屋敷に入ることが出来る数少ない外部の人間で、中でも朝食の席に並ぶことをこの屋敷の王に許された、さらに少ない人間の一人である。
暗殺部隊の異形の王様は、滅多に朝食に、外部の人間を入れることを望まない。
ドン・ボンゴレですら、この屋敷のこの朝の、食事の一時に混じることを許されたことはない。

「えー? そんなに静かでしたかークロームねーさん? アホ隊長がアンアン遠吠えしてる声とか、夜通し聞こえてませんでしたかー?」
「……? 何も、聞こえなかったけど…?」

少女がここで食事をするのは始めてではない。

隣に座る霧の術師にとって、彼女は幼い頃から共に生活をしてきた家族のようなもので、二年前にこの屋敷にやってきてから、何度も一緒に仕事をすることがあった。
彼女だけなら別になんの問題もない。
術師はどこでも貴重な存在で、クロームもフランも、ここまでレベルの高い能力者はそう数がいるわけではない。そんな貴重な人材に、危害を加える人間は、少なくともボンゴレの禄を食んでいる中にはいないから、ある意味ここはどこよりも、非常に安全なところなのだ。

「俺ぁ狼じゃねーぞ、フラン。クローム、おまえは朝はオレンジジュースでよかったよなぁ? ルッス、あるかぁ?」
「あるわよぉ。この会社の味でいいかしら?」
「はい、……ありがとう」

テーブルの上に並んだグラスに飲み物が注がれ、サラダが並べられるとようやく、赤瞳の王様がやってきて席に座る。

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