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迷彩教室・2

 帰宅を促す放送が流れる。部室は入ったときから電気をつけていたから気が付かなかったが、あたりはすっかり暗くなっている。日が暮れるのが早くなったな、と思いながら窓の外を見る。今日の分をバックアップを取ってからパソコンを止め、周辺機器の電源を落とす。念のためコンセントを抜いて、キーボードにカバーをかける。一応備品だし、今年買ったばかりの新品なので丁寧に扱うことにしているのだ。来年になったらそんなことは忘れてしまうのだろうけれど。
 椅子を整えて、窓の戸締りを確認する。ロックをかけて、カーテンを引く。荷物を取りこぼしていないのか、机の周りを確認してから部屋を出る。出口でもう一度部屋を見渡して、鍵を閉める。
 部屋の鍵を持って職員室へ向かう。
 向こうから副担任の鮫島先生が歩いてくるのが見えた。鍵を持った手を振って合図をする。先生に鍵を持って行ってもらえば、職員室を回らなくてすむだろう、と考えたからだ。
「おっ、もう戸締りしてくれたのかぁ?」
「今日は一人だったので」
「そっかー、部長は真面目なんだなぁ」
「一応部長ですから」
「そっかぁー」
 大きくてほそっこい手がわしゃわしゃと髪の毛をかき混ぜる。子供みたいだけど、そうやって先生に頭を撫でられるのは嫌いじゃない。
「プログラムコンテストに出るんだっけか?」
「はい」
「ガンバレよ」
「そこそこに。鍵、お願いします」
「おう。気をつけて帰れよー」
 鍵を渡して別れる。先生は暗闇の中でもわかる白い顔で、ひらひらと手を振っていた。

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