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2013年冬コミ新刊

冬コミの新刊出来ました。
「天国より野蛮」
A5 P36 300円(頒布価格訂正しました。1.11)
裏剣帝様本総集編。ビッチ剣帝様の本です。
「裏剣帝への道100人斬りスペシャル」「裏剣帝への道100人斬りスペシャルおまけディスク」を再録、書きおろしはモブ姦を駆逐する剣帝様ですが色気のある描写がほとんどない下衆ネタに…。




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SPARKの新刊

10月27日SPARK8の新刊予定です。
「BraveryGorstDevils」九代目のお墓であはんうふんする三十路ボスカスがちょっとアレな話。
表紙はまつりごさんに描いて頂きました。


ザンぷちペーパーラリー、シールラリー、Tiamo3ペーパーラリーに参加しています。
シールは購入された本新刊1冊につき1枚差し上げます。既刊は数にかかわらず1枚の予定です。

他に前に作ったヴァリアー紋章のマカロンストラップと、プラバンストラップがあります。
ストラップはSとXのイニシャルがあります。

既刊は「のけものきたりて」「眺めのいい場所」「まちでうわさのかがやくおうち」「七つの大罪」「喧嘩する愛は錆びない」を持っていきます。
「秘密の花園」「寂しい熱帯魚」も少し持っていきます。
机の上に並んでいなかったら声をかけてください。

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夏コミの新刊です。


眺めのいい場所
A5 p36 頒布価格400円 18禁
夏なのでエロで!というそれだけの本です。
子ザンスクの初々しい話と三十路ザンスクのただれたお話の二本立て。
サンプルはどこをとってもエロなので折りたたんでおきます~。



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HARUシティ新刊出ました…

なんとか新刊出ました…!
久しぶりにオフラインページに追加してあります。
まだいろいろいじっている最中なので見苦しい部分があると思いますがご容赦ください。
新刊
「少年はそれを我慢できない」A5 P28 頒布価格300円 全年齢
16歳御曹司ザンザスと30代剣帝スクアーロの話。前に年齢差アンソロジーに寄稿した話が元になっていますが書いているうちになんだか影も形もなくなってしまいました。
熱出してぶっ倒れてるスクアーロとそれを気に病むザンザスの話。
少年はそれを我慢できない・表紙サンプル
本文サンプルは折りたたみからどうぞ!

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メガヴァリの新刊について

ぎりぎりになってしまってすみません!
明日メガヴァリに新刊出ると思います。
「七つの大罪」A6(文庫サイズ)7冊組です。1冊16~40Pの間でバラバラです。
スクアーロ、ザンザス、フラン、ベル、ルッス、マーモン、レヴィの小話をぎゅむっと詰め込んでみました。表紙は全員のイメージにあわせて(あと手持ちのものから選んで)一応全部色違い、フォント違いです。ベルとマーモンの綴りが豪快に間違ってますのでスルーしてください…。

こんな感じです。
本文サンプル(スクアーロ編のごく一部)はpixivに置いてあります。
こちら
当日はペーパーラリーに参加しています。
TANGENTIALSideRの冬コミの既刊もお預りしています。
それから当日は冬コミに引き続き、先着でアクリルたわしを配布いたします。
一応ヴァリアー隊服イメージで、スクアーロ、ザンザス、フラン、マーモン、ベルっぽいものを各数枚準備してあります。手作りなので品質が安定していないことをご容赦ください。
既刊は「喧嘩する愛は錆びない」「まちでうわさのかがやくおうち」「暁と黄昏の十二時間」「黄昏と暁の十二時間」「秘密な花園」「淋しい熱帯魚」です。
「まちでうわさのおおきなおうち総集編」は製本した分がすべて通販発送で終わってしまったので、今回搬入はありません。ご了承ください。
それでは当日お待ちしております!


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まちでうわさの輝くおうち

家の明かりは外に漏らさない。

暗がりで生活するのは苦ではない。
人よりよほど夜目が利く二人は、日本人よりは暗闇に強い。
淡い色の虹彩は光に弱くて、代わりに夜の暗がりのほうが楽は楽だ。
それは若い時分からの習いのようなもの、年を取った今でも、目をつぶって家の中を歩くのに支障はない。
けれどその屋敷は冬のひと時、白く輝く明かりに覆われることになる。
日本の夜は明るいと、極東の国にやってきた当初、二人はそう思っていたが、通りを外れると急に闇が深くなる気配がある。
ハロウィンが終わった途端、家の表にともされる明かりに、不信を抱いたのは仕方のないことだ。
個人の家でそういうことをするということが、あちらではほとんどないのだ。
街中では、公共の街灯以外には外の看板を照らす明かりのワット数や色にも厳しい規定があることがほとんどであるし、田舎でそんなことをすれば、たちまち盗まれたり壊されたりすることが多い。
人がいなくてもものが盗まれたり壊されたりしない国は、世界中で日本だけなのだ。

「……日本って国は平和なんだな」
「そうかもなぁ」
「うちもやるかぁ?」
「なんでそうなる」
「…あんた、すごくやりたそうだぜぇ」

瞳の奥で湧き上がる好奇心を見透かされて、赤い目の男が驚いて隣を見る。銀灰の眼差しは楽しそうに、通りの家の植え込みに飾られた、白と青のLEDの明かりを映して光っていた。
それはまるで、冷たく光る冬の水面に、きらめくダイヤモンドが輝いているよう。

「…見てぇか」
「やってみるかぁ?」
「どんなになるか、気にはなるな」
「やってみようぜぇ。植え込みの剪定はだいたい終わってるしよぉ、小さいのは終わったらすればいいだろぉ」
「剪定してんのか」
「してるぜぇ。日本の落葉って遅いんだなぁ」
「色が変わるのがすげぇ」
「そうだなぁ。空気が違うから色も違うぜぇ」
「今年は綺麗だった」
「暑かったし、急に寒くなったからなぁ」

そんなことを言う隣の男の肌が少し乾いている。
異国の水に洗われて、髪の色が濃くなったような気がすると夏場は思っていたけれど、今は少し、肌が薄くなったようだ。
甘い匂いのボディクリームが体臭と交じり合って、澄んだ夜の空気のようになる。
寒いのでもっと近くで暖を取ろうと抱き寄せた体から、冷たく饐えた青い香りがするのは悪くない。

スクアーロの匂いはまた少し変わった。
若い時分は青くて瑞々しく、長じて後は慣れ親しんだ浅い薄い香りになった。
暗殺部隊という仕事柄、体臭は薄く、香水の類もほとんどつけたことがない。
代謝がいい体はそれでもそれほど匂いが気になるようなことはなく、うっすらと淡い牧草のような香りがするのを、ザンザスは好んでいた記憶がある。
仕事を辞めてから少しは香りを纏うようになり、ザンザスが選んだ青い果物の香りの香水は、スクアーロの体臭と混ざると、えも言われぬ深い、夜の青さを感じさせるものになる。
そんな体を抱き寄せて、体温を感じるのがザンザスは好きなのだ。

「今日買えなかったもんは明日買いに行こうぜぇ」
「面倒だから通販で頼め」
「みかんは来年届くように頼んであるんだけどよぉ、少しだけ買おうぜぇ」
「食べてぇのか」
「この前、加奈子さんから貰ったもらったみかんが、もうそろそろ終わりそうなんだよなぁ」
「家でとれたといって持ってきたアレか。買ったのとは味が違ってよかった」
「なんだか懐かしい味だぜぇ」
「確かにな。ヴァリアーのアジトに植わっていたmandarinoに、似た味があった」
「味一緒だろぉー」

そうしてこのパートナーは、年経ての後も、同性にも異性にもよくモテる。
日本人は外国人に非常に警戒心が強い人種だが、スクアーロはそんなものを軽々と飛び越えてしまうのだ。
乞われて近所の集会に出た直後から、友人を作ってきたのはさすがのザンザスも驚いたものだ。
男女問わずスクアーロには惹かれるものがあるのだろう。
本人は、珍しいし、声が大きいからじゃねぇのか、などと見当違いのことを言っていたけれど。

「買ったみかんは甘すぎる」
「いやかぁ?」
「リンゴにしろ」
「日本のリンゴはでかくて食べきれねぇだろぉ」
「俺が剥くからいい。買え」
「そっかぁ? だったらいいけどよぉ、あんた皮剥くのうまいもんなぁ。あとなんか欲しいもんメモしておけよぉ、明日市場に行くんだからなぁ」
「日本の冬は忙しねぇな」
「クリスマスが終わったら一瞬でお正月だぜぇ」
「カミサマが来るんだったか?」
「年神さまってのが来るんだそうだぁ」
「日本じゃなんでもカミサマだな」
「ホントになぁ」

夜の散歩をしながらあたりの、家の庭のあかりを覗く。
朝が寒いのでなかなか散歩が出来ず、最近は夜になってから歩くようになった。
表通りから少し中に入ったこのあたりは、夜はほとんど車が通らない。
住宅街が途切れた先は畑と田んぼが続いているからが、冬になればあたり一面、茶色の土野原で何もない。
夜は懐中電灯で足元を照らさなければ危ないほど。
遠くのグランドの明かりが唯一の光源、しかし最近はそれもない。
そんな暗さは彼等には懐かしいものでもある。
日本の夜は明るすぎる、赤瞳の男はいつもそう思う。
黒い虹彩を持つ人間が多い日本では、闇はもっと深く感じるのかもしれない。
彼等が街灯の光を眩しいと感じるように。

「明日の夜はケーキ焼くぜぇ」
「チキンは俺が焼く」
「そういえば昼間、ヒバリが来てお歳暮置いてったぜぇ」
「そうか。草壁か?」
「本人が来たぜぇ。今日は十二件回るって言ってたぜぇ」
「あいつも勤勉だな」
「顔見るのも仕事だって言ってたなぁ」
「なるほど」
「なんだろうなぁ。楽しみだぜぇ。まだ見てねぇんだ、一緒に見ようと思ってよぉ。中身なんだろうなぁ? 雲雀の趣味はいいからなぁ」
「そうだな。楽しみだ」


赤い瞳の男は元来真面目な性質だった。
銀の髪の男は派手なことが好きで、面倒見がよくて楽しいことが好きだ。
なので二人して製作した始めての冬の家の飾りつけは、初年こそおそるおそるという感じだったが、翌年はかなり派手になった。
どこからかぎつけたのか知らないが、雲雀恭弥が人を出して、面倒な飾りつけの一部を手伝ってくれたりもした。
二人の屋敷は通りから少し入ったところにあるが、前にも後ろにも家がなかった。
周り中ぐるっと畑でひどく見通しがよいので、離れたところからもよく見えるのだ。
防犯的には杜撰なように見えるが、家には雲雀の会社に直接繋がるホームセキュリティの契約が入っているし、屋敷周りには移転した当初に植えた木が大きく育ち、居間や台所を適度に隠している。
北側に広がる畑の間を区切る生垣もそろそろ人の背くらいにはなってきていて、屋敷の中を覗かれる心配はないし、木立に紛れて赤外線センサーもついている。
お洒落な外観は人目をひくこともあり、綺麗に片づけられた畑は人の視線を呼ぶ。
冬は暗い。
あたりは畑と家しかないから、夜はいくつかの街灯を残して真っ暗だ。
その中で輝く建物は、夢のように美しかった。

それは夜鳴きする子供をあやしに来た母親を慰め、犬を散歩させながら一休みする老人を楽しませ、塾帰りの子供が車窓から目印にする、そんなものになっていた。
闇夜を明るくするには、相当の数の電球が必要である。
虹彩が薄い二人にとっては十分でも、黒い瞳の日本人にはいささか寂しい光の量ではあるが、それでも屋敷の一部分がキラキラと、タイマーに合わせて輝く姿は、乾いた空気の中ではとてもあたたかく感じられることになるだろうことを、主の二人だけが知らなかった。

家の明かりが漏れないように、分厚い遮光カーテンを引いて、その時期は夜を過ごしている。
朝から薪ストーブをつけて、ひがな一日それで暖を取ることにしている。
吹き抜けを通って二階を通った空気が家中を暖め、分厚い壁が外の空気や音を遮る。
手入れの行き届いた屋敷の住人の、生活は本当に慎ましやかだ。
湯たんぽと人肌でシーツをあたためる夜が過ぎる。

「ほら」
「おおっ、ありがとなぁ。やっぱりあんた、リンゴ剥くのうまいよなぁ」

くるくると手の中で赤いリンゴが回る。

ナイフの先から細く長い丸い皮が、踊るように男の手の中から生まれてくるのを、スクアーロは何度も不思議そうに見てしまう。
これは魔法か何かだろうか、分厚い手のひらの中で数回、踊るリンゴがどうして、こんなに綺麗に肌を見せてしまうのだろうか。
確かにこの男の前で、いつまでも服を着ていることが出来ないことは、スクアーロはよく知っているけれども。

「うさぎにでもしてやろうか?」

そもそも欧州のリンゴは小さくて、手のひらに包み込める程度の大きさだ。
皮を向かずそのままかじるか、煮てジャムにしたり、肉のソースにするためにある。
日本のように両手で持たなければならないほど大きく、剥いて生で食べるのが主ではない。
日本の冬を過ごすうち、いろいろなリンゴを食べるようになって、気が付けば、それを剥くのはザンザスの仕事になっていた。
ナイフとは違う日本の包丁の扱い方を、ザンザスはすぐに会得して、スクアーロよりよほど上手に果物の皮を剥いてくれる。

「それは風邪引いたときにとっておいてくれぇ」
「忘れんなよ?」
「忘れるかよぉ! つーか、そもそも風邪なんかひかねぇぞぉ!」
「ナントカは風邪引かねぇって話だしな」
「なんだとぉ!」

寒くなると肩が痛くなるとは、決して言わない連れ合いと一緒に、年が明けたら温泉とスキーに行く予定を思って、赤目の男は目を細める。
子供のように真剣に一途に、しゃくしゃくとリンゴを齧る銀目の男がそれを見て、嬉しそうにはにかんで答える。

「これなんの品種だぁ? この前より酸っぱくねぇなぁ」
「走りのモンは酸っぱいんだ。今はもっと甘いのが出てる」
「みつが入ってるぜぇ」
「甘ぇ」
「俺はこれが好きだなぁ。なんて品種だぁ?」
「おまえがもらってきたんだろうが」
「あー? そうだったっけかぁ?」
「相変わらずホイホイとなんでも貰ってきやがるヤツだな、おまえは」

この夏からスクアーロは知り合いの近所の人にフランス語を教えている。
昔子供部屋があった離れを開放して、そこに人を集め、週一回二時間ほどそこに出かけていって簡単なフランス語を教えることになった。
なんでもその家の娘がフランス人と結婚してあちらに住んでいるそうで、生まれた子供と少しでもフランス語でしゃべりたいのだそうだ。
もう一度フランス旅行がしたいという友人や知り合いなど、毎回五、六人の生徒が集まっている。
費用はテキスト代として毎回五百円づつ払ってもらっている程度だ。
リンゴは生徒の実家のもので、毎年一箱送ってくるものをおすそわけしてもらったものだ。

「味がまだ若いな」
「さすがだぜぇ」

 しゃくしゃく、リンゴを齧る音だけが、ゆっくり回るファンの音に紛れて聞こえる。 


冬の夜は長い。
長い夜を隣に相手を抱き寄せて、すごす年月ももう、四十年が過ぎようとしている。

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冬の新刊など

冬コミの新刊は爺ザンスク本が出ます!
10月の再録本から漏れた爺ザンスク小話+書きおろしの話で1冊になります。
サンプルは取り急ぎpixivの方と一つ前にあげてありますのでご確認ください。
ちょっとナーバスになってる爺鮫がうだうだしている話です。
委託本3冊+無料配布もお預りする予定です。
あとメガヴァリのサークルリストも出ていました。スペース頂けました!
う゛ぉぉい21で参加予定です。冬コミから新しいチラシ配布も始まるようなので楽しみです!!



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まちでうわさのかがやくおうち

ベッドの中から這い出して眺める朝の光が弱い。
 カーテンを開けるためにベッドから降りる、その一歩が一番厳しい。
 寒い季節はとくに辛い。ぬくもりが本当に手放し難い。

「今日も寒ぃなぁー!」

 声を出す。今朝は少しかすれるくらいで済んでいる。
 一緒のベッドで寝るようになって、もう何年になるのだろう。
 さすがに昔のように頻繁に肌を触れ合わせることは少なくなった。皆無という訳ではないが、毎日、近くで手を触れて、体温を感じて寝ているから、それで満足してしまえるようになってはいる。

 ヴァリアーのアジトではわからなかったことがある。
 冬の夜の寝る前の準備だとか、お互い年をとったなぁ、と感じる部分が違うとか。
 そんな些細なこと、けれど大きな違いを感じるようになったことが、まだ嬉しいと思っていることが、不思議で楽しくてたまらない。

「今日も天気がいいみてぇだなぁー」

 カーテンをいきおいよく開ける。
 ペアガラスは結露しないので、朝でも外がよく見える。遅い朝の日差しが家の間から、弱い光を世界に投げている。うっすらと闇から目覚める朝の、その風景を見ることが、スクアーロにはとても楽しい。
 今日も自分が生きていていることが嬉しい。
 ベッドの上には大きなふくらみがあり、その中でぬくもりを惜しんでいるのは、生きていて動いていてしゃべっている愛しい男。
 ザンザスが健康で元気で機嫌よく、生きていることを感じ取れることが嬉しい。
 自分の手で、肌で、それを感じ取れることが、とても。

「おぉい、起きろよぉー」

 カーテンを開けてベッドに戻る。
 ふくらみはぴくりとも動かないが、すでに目が覚めていることはスクアーロにはわかっている。
 だからといってさっさと起きる、という選択肢がザンザスの中にあるわけがないことも。

「起きねぇのかぁー? 一緒に歩くって言ってただろぉー?」

 羽毛布団の中でそっぽをむく背中に手を伸ばせば、ふかふかの最高級ダウンを隔ててさえ、暖かなぬくもりが一つしかない手のひらに伝わってくる。
 純毛の毛布をまくり上げようとした手が、布団の中に引きずり込まれた。

「なんだぁー?」
「寒ぃ」
「まぁなぁ」
「俺は今朝は飯抜きなんだ。少しは付き合え」
「そらそうだけどなぁー」
「検査のために水も飲めねぇ。俺の前で飲み食いするつもりか?」
「するぜえー、しねぇと腹へって、動けねぇからなぁー。俺ぁザンザスと違って腹減るとすぐ動けなくなるんだぜぇ」
「少しは太ってみやがれ」
「年とってから太ると足が悪くなるだろぉー」
「少しの脂肪は財産だ。…寒ぃ」

 握られた腕はぐいぐい引かれるばかり。
 なんだよ、顔を覗き込もうとベッドに膝を乗せたところを、あっという間に引きずり込まれた。

「寒ィ」

 そういいながら少し埃っぽいスクアーロの、銀だか白だかわからない髪に、ザンザスが頬を押し付けてくる。
 ザンザスの腕の中に抱き込まれて、逃げられないように足を絡められた。
 最近二人して寝るときに靴下を履くようになったので、足裏が触れて喧嘩をすることもなくなった。
 ちょうどいい位置に体を動かして、ぎゅっと腕を回して抱きしめる。
 ザンザスに触れているとどうしてこんなにいい気持ちになるのか、スクアーロにはわけがわからない。麻薬とか電波とか色々、この男から出ているんじゃねぇんだろうか、とスクアーロは常々思っているのだけれども、その話をすると大抵の知人は「それは君のほうなんじゃないの」だの「その言葉そっくりそのまんまセンパイに返すよー」だの「あらあらごちそうさま」だの言われてしまうのだ。
 なんでそんなことを言われる筋合いがあるのだろう。ザンザスの姿を見ているだけで、俺はこんなにぐにゃぐにゃになってしまったり、悲しくなったり、嬉しくなったりするのだ。自分の感情を他人に左右されることなどスクアーロには不愉快でしかたないことだったが、ことザンザスが相手だとそれがとてつもなく幸福で気持ちがよくて嬉しいことに感じられてしまうのだから、まったくどうかしているに違いない。
 もういい加減ザンザスだっていい年で、その体も顔も衰えてきているだろうに、それが全然ちっとも醜いとかみっともないとかかっこ悪いとか思えないのもどうかしている。
 年を取るザンザスを眺めて暮らせるのは本当に楽しいことだ。

 最近はザンザスが元気でいることになんだか妙な達成感を感じるようになっている。
 もちろんザンザスを守ることを怠ったことなど一瞬たりともないけれども、いままでのように、力でザンザスの前に立ちふさがる様々な困難や障害を、切り伏せねじ伏せ倒してきたころとは違う心持ちになっているのではないだろうか、という気分になることがある。
 いや、前だってそんな気分になったことはあるけれども、今は体を張ってザンザスを守る立場でなくなったぶん、そちらの思いが強くなっている気がした。
 それは普通母親や妻の立場だろうと、さんざんにからかわれることもあったけれど、確かにこれは母性、あるいは父性なのかもしれないと思う。
 ザンザスが自分の作る野菜や料理で健康で毎日心地よく過ごしていることを確認するときの誇らしさをそう呼ぶのならそうだろう。

「そろそろ起きろよぉー」

 ザンザスはすっかり力を抜いて、スクアーロの腕の中に頭を預けている。
 このままでは本当にまた寝てしまう。
 それじゃ朝の病院の受付に間に合わなくなるぞ、とスクアーロは頭の中で時間を計算する。今日は時間までに、スクアーロが病院までザンザスを送っていくことになっているのだ。
 身支度にはちゃんと時間をかけたい。
 たかが一泊二日の人間ドッグだと言っても、どうせ他人に見せるなら一番かっこいいザンザスを見せつけたいし、ザンザスだってそのほうがいいに決まってる。
 めんどくさがりの癖にカッコつけたがりの男なのだ。
 他人に体を触られることが好きではない男だから、少しでも相手を懐柔出来て、やさしくしてもらえるようにしてやりたいのだ。
 それにスクアーロにとっては本当に、文句なしにいい男なのだから、ザンザスをそうすることに手間を惜しむなどということは考えられない。

「髪洗って、髭剃ってやるからよぉー、そろそろ起きたほうがよくねぇかぁー?」

 めいっぱい甘い声で懐柔する。
 それを聞くとようやく、腕の中の体に力がはいるような気がした。

「本当だな」
「だから早く起きろぉー」

 のそり、大きな獣が起き上がるような心地で、スクアーロは腕の中の体が動くのを感じた。
 布団の中に手を突っ込んで湯たんぽを出す。
 これで顔を拭くのがとても気持ちがいいのだ。

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まちでうわさのおおきなおうち(総集編)本文サンプル

夏コミの新刊は「まちでうわさのおおきなおうち総集編」です。文庫サイズで216P。
お外で読めるカモフラージュカバーつきw
製本がんばります…。
描きおろし52P。たぶん60超えた二人のリゾート話。

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「おもいだすのは光る海」


「バカ鮫もすごく元気そうじゃね? つーか先輩マジで化けモンじゃねーの。流石に少しジジィになったけどさー」
「おまえも立派な中年オヤジじゃねぇか」
「そらそーでしょ。俺フツーに年齢相応だと思うけど?」
「そんなオヤジいるかぁ!」
「まぁまぁこんな時に年の話するなんてヤボでしょ。あなたたちいい加減落ち着いたらどう? そろそろボスがお待ちかねよ、メイン呼んでもいいかしら?」

 別々の道で歩くようになって数年たっても、食事の場面でオカマの言葉は絶対だ。有無を言わせない指示を、素直に聞くのは習慣のようなもの。
 年甲斐もなく喧嘩を始めそうになる二人を黙らせるのも慣れたもの。

(中略)

スクアーロは出された酒が気に入ったようで、飲むペースがいつになく早い。
大丈夫かとルッスーリアが視線で問いかける。
赤い瞳は隠されているが、視線は自分の右隣、黄金色に冷えた香り高い酒を飲む恋人を見ている。

「ね、ボス、俺しばらくこの国いるからさー、ヒマだったら王子と遊ばない?」
「なんだそらぁー、おめぇ一人なのかぁ?」

 デザートに入る前に王子はそんなことを言う。
 そういえば王子はヴァリアーを引退してから数年間、世界中を旅していた。
 半年ほど前にハワイに部屋を買い、今はそこで暮らしているという。

「随分俗っぽいところで暮らしてるんだなぁー」
「まーね、でも買った部屋半分は貸してるよー。マーモンがそういうの詳しいから」
「あいつまだそーゆーことやってんのかぁー?」
「金増やすのって、マーモンにとっちゃ生きがいみたいなもんじゃね?
 止めさせる理由はないから好きにさせてるけどさ」

「おまえ、財産まるごと預けてんのかぁ?」
「他のどんな奴より、アイツが一番信用出来るっしょ?」
「そら、そうだわな」

 久しぶりに会うと話は尽きない。
 マーモンはどうやって突き止めてくるのか、突然やってきて一緒に旅をしたり、顔を見に来ただけで別れたりを繰り返している。

(中略)

 ベッドに連れ込んでジャケットを脱がし、ベルトを外して靴を脱がす。
 スクアーロは珍しく靴下を履いているのを見て取って、それも丁寧に脱がす。
 ぐったり、いい気持ちで伸びている魚はほんのり赤くなっていて、見た目だけなら相当に美味しそう。
 酒の匂いも強くて甘く、普段よりずっと近づいても不快にならない程度ではある。
 だがしかし、酔っぱらいは酔っぱらいだ。
 ザンザスも上着を脱いで体をゆるめ、冷蔵庫から水を取り出す。
 寝ているのかとベッドに近づけば、白い手が伸びてきた。

「みず」
「ほらよ」
「あーりがとう、なー、ザン、ザスぅ……」

 口を開けて水を飲む動作に不安はない。
 力もそこそこ入るようで、ちゃんとキャップをひねって開けられるようだ。
 ごくごく、喉が動くのを眺めながら自分も水を口にする。

(中略)


 促されるままに近づいて、手の中に体を落とす。
 背中に回される腕は弛緩した表情に比べると切羽詰まった力がある。
 ぎゅっと抱きしめられるのに顔を寄せて、欲しそうな唇に封をする。

「辛い」
「そっかぁー?」
「魚くせぇ」
「おまえは甘いぜぇー。マンゴーの味がするなぁー」

 もう一度キス。もう一度。もう一度。
 チュッチュッと何度かリップオ音が響く。
 そのうちスクアーロのほうが我慢できなくなって唇を塞ぐ。舌を滑りこまされる。しばらくスクアーロの味あわせておきながら、今度はそれを押し返す。間で味蕾をこすりつける。じゅく、と甘い音がする。甘い、とスクアーロは言うが、それはスクアーロ自体が甘いのではないのか、とザンザスは考える。キス。長い時間相手を味わう。
 久しぶり、でもないが、唇の間に火花が起こるのが判る。

「まだするか?」
「ザンザスの味がするぜぇー」
「おまえの味は魚だな」
「まっさかぁーんなことあっかぁー。俺ぁニンゲン、だぜぇー」
「そうだな。ヒレはついてねぇ」

 ついていたら、泳いでいってしまうから。

「確かめてみるかぁ?」

 あからさまなお誘いに、素直に乗っかることにして、ザンザスは体の力を抜いた。
 ベッドのスプリングは最高級の品質を誇り、ぎしりとも鳴りはしなかった。


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通販遅くなってしまってすみません。
明日現在受けつている分を送りますのでしばらくお待ちください…!!

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