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おいしいごはんのつくりかた~ディナーのまえに

 ときどき、一ヶ月に一回か二回ほど、男は女のアパートにやってきて、冷たい手を伸ばして女を抱いた。男は冷たい美しい外見の割に、激しい抱き方をした。女を立て続けに極めさせ、驚くほど巧みに胸を弄り、女の蜜をとめどなく溢れさせた。腰が痺れるほど激しく揺さぶられることも多く、呆然自失としている間に、身づくろいをして部屋を出て行ってしまうこともあった。
 かと思えば、酷く丁寧にじれったいほど優しく、寧ろいたぶられているか、舐られるように抱かれることもあった。
 けれどもどんなときも男はすぐに汗が冷え、呼吸は戻り、ぞっとするほど冷たい肌に戻ってしまうのだった。
 一緒に肌を寄せていても、少しも温まらないのだ。
 男はその氷のような白銀の長い髪や、沈んだ青い冬空のような瞳や、白を通り越して青くすら見える肌のように、本当は雪と氷で作られているのではないだろうか、と女に思わせるのに十分な冷たさを持っていた。
 男は部屋を出るとき、いつも女が気がつかないうちに机の上に金を置いて去っていった。
 最初、自分は娼婦のように扱われたのだと女は怒ったが、男は「引き換えになるもんが何もねぇんだ」と言って、女にそれを受け取らせた。
 男は女から、肌とセックス以外は何も受け取ろうとしなかった。したくないようでもあった。
 女は、男は他に女がいるのかと思ったこともあったが、そういう匂いは一切しなかったのでその推測はすぐに消えた。

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