おいしいごはんのつくりかた~メインディッシュ 美しいものは人をたやすく狂わせる。 美は所有できないものだ。 どんなにそれを求め、欲しがり、身を焦がしても、美しいものは――本当の美しいものは、所有されることを本質的に拒もうとする。 スクアーロはまさにそれだった。 何もかも捧げるといいながら、何一つ、『ザンザス』に『スクアーロ』を所有することを許さない。 美は、それを感じるものを所有する。 ザンザスは今日も、スクアーロを嬲りながら、その実、スクアーロに奉仕している自分を感じることがある。それはつまり、スクアーロが美しいからだ。いや、スクアーロを美しいものだと、ザンザスが感じているから、そう思うのだろう。 ベッドの上には白い魚が打ち上げられている。 びくびく震える白い腹が、ぬらぬらと濡れていて、それはまさにさばかれようとしている、魚の白い腹に非常によく似ていた。 腹の下からナイフを入れ、横にすっと引き、内臓を出す。そのまま肋骨の間に刃を入れ、身と骨を丁寧にはがすのが、基本的な魚のおろし方である。 今もザンザスは、そうやって広い生簀の中で、白い魚を捌いている真っ最中だった。「ん、っ、」 薄い皮膚の下で筋肉がうねるのがよくわかる。 たてた膝の間に手を入れて、ザンザスはぐっと指を曲げた。途端、びくっと膝が跳ねる。抱え込んだ腕の中で、弾力のある太股が、びくびくと震えて、そして弛緩するのを知る。「おめぇは」 指先に当たる、神経の集まった部分を撫でる。そっと撫でているつもりで、しかし、確実に位置を知っている、という動きで。 [11回]PR