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マーマーレータをたっぷりと

収穫の時期は忙しい。
食べることに時間をかけることをイタリア人は厭わない。それに男女の区別なく、休日のブランチを作るのは男の役目のほうが多いくらいだ。
料理がうまい男がモテるのは古今東西変わらない。

さんざん嬲られ愛されて、骨の髄まで溶けるような休日の、朝の光の中で目が覚めるのに、スクアーロはまだ全然、慣れることが出来ない。
普段ならそうそうぐずぐず、起きるのにためらうことはない。決めた時間に目が覚めて、どんなに体が辛くとも、しゃきっと起きて身支度が出来た。いままでは、たぶん。
目を覚ましたら部屋が明るくて、重いカーテンが全部綺麗に引かれていた。二重のジャガード織りの布はきちんと纏められていて、窓ガラスは綺麗に磨かれ、冬の光を受けて眩しいくらいにピカピカだ。
ガバっと起きたベッドの上はひとりきりで、足元に寝ていた猫が、億劫そうに目を開けてまた閉じる。
「え…っ?」
思わず出した声が別人だった。そんなことになるのも初めてではないけれど、出した自分の声に自分で赤くなって思わず、喉に手を当ててうつむけば、ふわふわの羽毛布団の下、素っ裸だと思っていた体にはきちんと、ダブルガーゼのパジャマを着ているのに再び驚く。しかもそのパジャマは、着た覚えもなければ、見た覚えもないものなの驚愕はさらに倍。
髪がくしゃくしゃなのは今に始まったことではないから、大慌てで手櫛で整え、シーツを直して起き上がる。天気がよさそうだからシーツを洗って、といつものようにシーツを引っ剥がして部屋を出れば、廊下にふわり、甘い香りが漂う。
甘いのはわかるが馴染みのない香りに、なんだろう、と思いながら階段を降りる。足元がだいぶふらふらするから、シーツをかかえたままだと危ないかもしれない。引越ししてきてからすぐに、手すりを新しいものにつけかえたことを思い出して、頬にさっと朱が登った。
「遅くなった、悪ィ」
シーツを洗濯機に入れようと思ったらすでに動いていたから傍にカゴに放りこむ。ランドリーの中のリネン類が全部取り替えられている。週末には全部まとめて洗って干して交換するから、今洗っているものの中に入っているのだろう。
キッチンに入ればいっそう、濃厚な甘い香りが漂ってきて、朝からなんだか、体が緩む。
「おはよう…、ザンザス」
「おはよう」
エプロンをきちんと身に着けて、コンロの前で鍋に向かっている背中に近づく。広くてたくましい背中に手を回して軽くハグ。抱きしめた腕の中で、右手の筋肉が動くのを確かめる。
「何してんだぁ?」
後ろから覗き込めば、白い鍋の中には飴色の何か。ゆるい飴のようなその中に、シリコンヘラがせわしなく動いて、中身を混ぜている。
「confettura」
「confettura? なんのだぁ?」
「おまえがこのまえもらってきたやつ」
「柿かぁ」
「cachi」
「同じだろぉー? つーか、元は日本語だよなぁ、cachiって」
「そうらしい」
「すげぇいいにおいだなぁ」
「元がすげぇ甘ぇ。砂糖が入れられん」
「すげぇ!」
煮汁はすぐにとろんとしてくるから、あまり固くなるまでに火を止めなくてはいけない。
confettura-ジャムは砂糖と果物のペクチンで固まる。柿はペクチンが多く、そのまま煮るだけで羊羹に出来るほどだから、少しでも加熱時間が長くなると、しっかり固まってしまうのだ。
「危ねぇから離せ」
振り向きもしない男にちょっとだけ、背伸びして耳たぶを後ろから齧ることで憂さを晴らした。
少しくらいは動揺しろよ、そう思わないでもないけれど、回した腕を離して体を離す。キッチンから出てリビングの椅子を引き、そこに腰を落ち着けると、男の動きを眺める仕事に精を出すことにした。
ザンザスの腕が傍らに伏せてあった瓶を取る。ヘラはレードルに持ち替えられ、火を止めるとすぐに、中身が次々、ガラスの中に移された。
甘い香りと明るいキャラメルブラウンと濃いオレンジで交じり合っている。庭で紅葉している木の葉のような色だ。
小さいガラスの保存瓶に2つ分、それと小皿に大さじ2杯分ほど余ったぶんを全部とりわけ、使った鍋を温かいうちに洗う。シリコンヘラで根こそぎ綺麗に拭った鍋はそれほど汚れてもいないから、ぬるま湯でさっと洗い流せば終わる。
続けてその鍋に浅く水を張り、さっき詰めたばかりの瓶を並べて火にかける。空気を抜くつもりなのだ。
「蓋しめてひっくりかえすくらいでいいんじゃねぇかぁー?」
「そうか?」
「ここいらは寒いしよぉー、乾燥してるから腐らねぇんじゃねぇかぁー?」
「外に置くのか」
「廊下に保存食入れてるとこあるだろー? そこに入れておけば平気じゃねぇかぁ?」
「すぐに食べねぇだろ」
「それもそうかぁー」
今年は何を作ったんだっけか、スクアーロはそんなことをつらつら思い出す。夏の終わりにトマトソースを山ほど作って、それでいっぱいになっている貯蔵庫に、ジャムが入る場所はあるだろうか?
今年は何のジャムを作ろう。リンゴ、キウィ、柚子、温州、伊予柑。夏に作った玉葱も美味しかったから、芽が出てしまうまでにもう一回くらい作りたい。リンゴは種類で味が違うという。確かに色も味も違うから、ジャムにしたらきっと味も変わるだろう。
鍋を湯にかけたら今度は、冷蔵庫からパンを取り出す。ようやくザンザスが振り向いた。
「…なんだその髪は」
「まだ梳かしてねぇからよぉ」
「…腹減ったのか?」
「んー? どうだろ……、つーか、起こせよぉ」
毛先をつまんで日にすかすスクアーロの、横顔を見ながらザンザスは答えを口の中で転がす。
もう昼近いダイニングの、テーブルに肘をついているスクアーロの髪が逆光でキラキラ、光っているのがやけに眩しい。銀の髪が光の中で白っぽく輝き、今朝はサラサラ、流れるようなしなやかさを失って、どこかふわふわ、やわらかくウェーブを描いて肩を、背中を覆っているのはまるで、童話の妖精か天使のようで、視線を縫い止めて動かすことを許さない。
そんな姿で隣で寝ていた情人を、叩き起こす気にはどうしてもなれなかったと、答える言葉を探しているうちに、それは天使から人間になった。
「朝メシはー?」
「昨夜の残りを摘んだだけだ。これ、食べたいだろ?」
「食べる!」
「二枚でいいか?」
「うん」
立ち上がろうとするのを手のひらで制し、ザンザスの腕が持ち上がって、ケースからパンを取り出す。昨日買ってきたパンの残りにナイフを入れ、四枚に切る。
冷蔵庫から牛乳を出し、そこにさっき作ったばかりのジャムを入れ、卵を一つ割り入れる。かるく混ぜてからバットに並べたパンにかけた。
「うぉお…」
「塗るのは後でな」
返事はない。スクアーロの視線が痛いほど、ザンザスの両手に注がれているのを感じて、少しばかりザンザスは唇をゆるめた。
パンを熱してバターを落とし、宙で溶かしてコンロに戻す。そこにバットから引き上げたパンを置いて、弱火で蓋をして三分。丁寧にかえしてから、今度はタイマーをかけて二分。
返した時から漂う甘い香りに、スクアーロの目元が蕩けたようになるのは、見なくてもわかる気がした。


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視界明瞭

頭痛い~と思って悶々としていたんですが
もしかして…と思い立って髪の毛を上げてみました。
頭痛スッキリ!視界サッパリィ!!
これが原因か――!!
…ということで体調不良が一気に解決しました。髪の毛短くしたから縛らずにいたんですが、それが悪かったみたいです…なんたる……_ノ乙(、ン、)_

前髪まででろでろ長い三十路スクさんはあの視界に慣れるまで大変だったんだろうな~~と思いつつ、仕事するときに前髪上げて作業してるスクさんにらしくなくときめくボスさんもいいなぁ…えへwww
仕事中は前髪びしっと上げてひっつめてる三十路スクさんとか楽しいのう…
ボスと二人して前髪とめるピンを選ぶの楽しんでたりするとかいいなぁ
女子高生かおまえらwww

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頭痛い

風邪引いたっぽい…
せっかくの連休なのに残念です

そしてジャンプは読んだんですが買わなかった…
手元にあるジャンプも片付けて切り抜かないとな~~

全然仲良しに見えないのに実は仲がいいような?感じが見えてくる二人を想像するとたまりまぬ…それを思い浮かべつつ

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お疲れ様でしたー!

このタグをつけるのもこれが最後かぁ…と思いつつ最終回でした!
前から話は聞いていたし実際にどうだったのかは11月入ったばかりの時に知ってしまって地味にショックでしたが、まぁなんつーか実際の最終回が来たら割とこう…しみじみしてしまって…いろいろ思い出が蘇りました。リボーンだけに。
まずは最後にカラーと白黒で両方のボスと鮫さんとご一同が見られてよかった!
キラツヤな現代鮫さんはかわいいわ綺麗だわ、ボスは毎度ながらエロいわかわいいわ
なんでフランがぼっちなんやんと思わないでもなかったり
マモたんアルコ一同じゃないんだ…!ってのに地味に嬉しくなったりw
なつかしい面々が一同に介してよもやのグロたんなども含めつつ
こんなにいたのか~~とひたすら感慨深く…なんかしみじjみ…。
なにはともあれ連載終了お疲れ様でしたー!
とび森を買ってプレイしてるんでしょうか…??

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殺し屋さんをそういう粛清の方法で許しちゃうんだ先生よ…

なんだかいよいよ終わりそうというか明らかに終わるなーって感じの復活でありますなー。
ハマってるジャンルの連載が終わる体験は久しぶりでありますが、ジャンプは初めてかなー。チャンピオンとガンガンは数回あったんですが、やっぱりジャンプは情報量が違うので緊張しますね…!!

それにしても京子ちゃんとハルが可愛らしい…個人的にはハルのほうが色々な点でおいしい気がするんですけど、中学生はそこまで考えてないよね(大人の汚れた判断基準ですか
らw)

それにしても毎回殺人教室が地味にすげーと思ってますが今回のオチがなんかこう斜め上行ってて凄かった点タイトル通りそれでいいの?みたいな展開なのがステキ。
殺センセーは大変大人であると同時煮、心底教育者であるのだなぁ…と実感する次第。E組の生徒に「生き延びる力」を教えてる、という教師に一番大切な仕事をしているという点で素晴らしい触手ですね。
ところで先生の二人称って人じゃないから触手カウントでいいのかしら…。


今週はソレより何より、本買っておっかけしてた作家さんが読み切り書いてたことが一番の衝撃でした。まさかのジャンプー!!
てっきりFellowsとか角川か講談社でデビューするのかと思ってたよ…!!
まさかの王道にびっくら。
同人誌で100Pの漫画を描いて終わらせることが出来るような人は、結局漫画家になってしまうものだなぁ…という予想はたいていあたるんだなぁ…と実感しております。
一人で半年以内に100Pの漫画を描ける能力があるような人はホントに漫画家になるしかないよな…というかなっちゃうよな~~。
そこまでして書きたい話を描く自己顕示欲と絵を描く速さ、話をまとめる力、本にするために話を終わらせる力がある人ですからねー…。
いままでにデビュー前でそう思った人が数人いましたが、そういう人全員漫画家になって連載持ちましたね。
女子はなかなか続けていられないので、今は商業漫画家じゃない人も多いですが。(でもコミケのたびに40Pの漫画一週間で描き切れたりするんだよね…ホントに手が早い)。
出産と子育てを挟むと、漫画家のキャリアも中断してしまうことが多いですから…。

鮫さんの心臓とボスの右手と両足について、もうずっと悶々と考えております。
迷彩教室もそんな流れかなぁ。そしてこうなった二人のことを、十年後の未来の世界のほうの時間軸の二人は知らないわけなんだろうな…と思うと、どこの場所の何のネタ拾ってもある意味原作通りじゃないのか…? と思ってしまう次第でございます。
それも別の世界の話だったら可能性はあるものね…。

タカマガハラがさっくり終わってしまいましたが、この人の絵と話の構成が非常にシンプルで面白いので、またどこかで描いてくれないかなー。男のキャラに色気があるってのは大事ですわ。あと人間以外が色っぽいのも大事。言葉感覚も気持ちがいいものね…。

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スペース頂けましたー!!

一年半ぶりのコミケであります!
スペース無事に頂けました。30日日曜日、東3ホールヤー12bで参加させて頂きます。
406ネタの本とか色々出したいと思いますのでよろしくお願いします。
通販遅れ気味ですみません! 製本する時間が取れなくて…すみません…。

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あなたの宝石・2

 ボウルにいっぱいの栗をヒトツヒトツ、グラシン紙で巻いて鍋に入れ、かぶる程度の水を入れる。栗が動かない程度に火を入れ、沸騰したら砂糖を重量の三分の一程度、一気に入れて煮溶かす。そのまま弱火で一時間煮て、水分が減ったら水を足す。アクを取る。
 一時間煮たらそのまま一晩、冷ます。
 翌日、また少し水を足して砂糖を加え、栗が動かない程度の弱火でじっくり、一時間ほど煮る。ふつふつと泡が浮いてくるので丁寧に取リ除く。煮ているうちに水が減ったらかぶるまで足す。一時間煮たら火を止めて、そのまま一晩、冷ます。
 三日目、さらに水をひたひたになるまで加え、砂糖とブランデーをたっぷり加える。入れすぎると苦くなるが、お子様のいないヴァリアーでは、少し重めの、しっかりした甘い味が好まれる。手加減なしに投入される砂糖とブランデー、シェリーとグランマニエも足す。そのまま煮ていると、ようやくグラシン紙に砂糖がついて粉になってくる。そうなればようやく出来上がりだ。
 ひとつひとつ、丁寧に煮汁から引き上げて紙から出し、バットに広げて冷ましてゆく。煮汁を少し煮詰めてからからめ、そのまま置いておけば出来上がり。
 冷やしている途中に王子とカエルに奪取されぬよう、ルッスーリアとスクアーロの視線は刃のように鋭い。
 毎年この段階でキッチンを襲撃してくる略奪部隊が、今年は数回、偵察に来ただけですんでいる。いまかいまかと襲撃を迎え撃つ準備をしていた二人は拍子抜けしたが、妨害が入らないのはよいことだ。元は冬の間の保存食、栗の水分を砂糖と入れ替えるためのものだから、なるべくたくさん作って瓶に詰め、地下の食料貯蔵庫に入れておきたいものなのだ。ここまで手間をかけなくても本来はいいのかもしれないが、しかし、しっかり砂糖と酒で煮含めたアジトの栗のグラッセは、ナターレのパンに入れると香りが格段に違うのもまた、事実。
 隊員総出で収穫した大量の栗は、こことは別の階下のキッチンで、煮含められたりペーストにされて、また別の用途のために加工調理されているが、これはそれとは違う、特別の日のためのものだ。
 下ごしらえが終わるとルッスーリアは仕事があるので後をスクアーロにまかせて出かけてゆく。スクアーロはそれを煮て、冷まして、適度な温度になったところで冷蔵庫に鍋ごとしまって一日目が終わる。
 二日目はスクアーロが、昼食を作る合間に鍋を火にかけ、ごく弱火でランチの時間、丁寧に煮含めてからまた冷まし、冷蔵庫にしまっていた。
 三日目は午前中、玄関での事務作業があるスクアーロが出られないので、替りにルッスーリアが仕上げの作業をしている。ルッスーリアの隠し味はコアントローを大さじ一杯入れることで、そうすると香りがぐんと引き立って、それはそれは美味しくなるのだ。
 ゆっくり煮た栗はつやつやと輝き、まるで小さな茶色の宝石のよう。市販のものよりこぶりだが、鍋いっぱいの分量はさすがに迫力がある。
「綺麗に出来たわ~!」
「おっしゃー!」
 キラキラと砂糖の柔らかいベールを纏った栗は、光にかざすと宝石のよう。こっくりと深い栗の色は沈みすぎず浅すぎず、毎年違う色で毎年違う輝きだ。
「これなら大丈夫よスクちゃん!」
「あったりめぇよ!」
 そう言いながらもスクアーロの表情は子供みたいにわくわくしていて、見ているこちらも嬉しくなってしまいそうだ。普段は静かな湖の底みたいな銀青の瞳が、今は朝の海みたいにキラキラ光り輝いて、眩しくて明るくて目が潰れてしまいそうだ。
「形の綺麗なの選びなさいよ」
「そうだなぁー、どうせそんなもん見もしねーで食べるんだから関係ねーとは思うんだけどよぉ」
「ばっかねぇ、だからこそ、綺麗なの選ぶんじゃない。どーせオトコはそんなもの気に止めないでしょうけど」
「だよなぁー」
 互いのオトコへの不満を口にしながら、しかし二人が選ぶ目付きは真剣そのもの。スクアーロが数多くの中から一番形がよくて大きくてキレイなものを選び、次にルッスーリアが選ぶ。
 選別されたそれだけは別にしてから、今度は出来たものを綺麗に保存容器に詰めてゆく作業が待っている。
 容器に詰めた後に空気を抜くために熱湯を回しかけるから、少し砂糖が溶けてしまうが、なに、夏でもひんやり涼しい貯蔵庫に戻れば、それも冷えて固まって、きらきらと白い宝石のようになって、野性的な肌を飾るに違いないのだ。
「あと任せてもいいかぁ?」
「そうね、先行ってらっしゃいな」
 ひらひら、片手で煽ってスクアーロをキッチンから追い出せば、はて、砂糖とブランデーの香りに誘われて、やってくる客人の気配も感じられない。
 そういえば怠惰の王子と幻術師はオシゴトで、夜にならないと戻れないのだ。毎年この時期は私達がオシゴト入れないのを、はたしてどう曲解してくれたのやら。
 これは戻ってきたら機嫌悪いわね、そう思いながらルッスーリアは冷蔵庫の中身を思い出す。機嫌の悪い子供をなだめるにふさわしいお菓子を、何個作っておこうかしら、などと思いながら。

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これは…

なんか終わりそうだな~と思ってたけど本気で終わりそうだなリボ
大団円で終わる気かな…??
とりあえず元気になったボスと鮫からの結婚式招待状はまだですかね
マジでその手の展開になっても問題なさげな気がしてきた…コマとコマの間で!
書いてないってことは何も公式にはなかったってことでいいよね??

それにしてもぎんたまは銀さんが神楽の保護者確定しててちょっとこの手の展開ってジャンプとしてはおもしれーなーとしみじみ
それでいいのかいと思いつつも神楽ちゃんがまだ子供だと思いたい二人の位置は父親で新八が母親の役を振り分けられているというのが不思議

あとめだかちゃんがなんかこう…初めて恋愛ものっぽく?なった?ような??
それにしても触手先生凄いな コミクス表紙もすごい 災難地味に面白いw

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あなたの宝石・1

「ここ数年夏が厳しくってよぉー」
「それ普通に年なんじゃないの」
「かもなぁー」
 そんなことを言い合いながら、キッチンではリズミカルに包丁の音がする。
 ヴァリアーの談話室に続くキッチンは開放型で、談話室から中を見る事が出来る。手元を見られながらの料理が基本で、だから他の人間はそう簡単に、料理を行うことが出来ないのだ。
「今年はどのくらい作るの?」
「出来るだけだぁー」
「そんなに作れるの?」
「鍋に入らねぇなぁー」
 そう言いながら二人の手元には切れ味の鋭いペティナイフ、手の中の木の実の皮を剥いている。
 ヴァリアーのアジトは深い山の中にある。山には実のなる果実があちこちに植えられていて、籠城に備えられている。だからもちろん、春から秋は次々と果実が実って収穫が続くのだ。
 今は栗が出来始め、山の動物と競い合って収穫に勤しんでいる毎日だ。
 今日もスクアーロはキッチンに詰めている。昨日からキッチンからは甘い香りが漂っている。それが匂い始めると、金髪の王子はどこかそわそわしながら普段滅多に行かない台所に足を運んでは、この数日、台所の主になっているようなスクアーロから追い出されていた。
「堕王子ー、いい加減諦めたらどうデスカー、姐さんと作戦隊長の防御を敗れるとか思ってますー?」
「バーカガエル、てめぇ食ったことねーからんなこと言えんだよ」
「すいませーんミーは貧乏人なのでー高価なお菓子に縁がありませーん」
「その言い方王子に同情買おうとしてる?」
「買えるなら買ってクダサーイ」
 キッチンの見えるソファにうずくまって、王子はカエルと様子を伺っている。きゃらきゃらと完全にガールズトークに近い雰囲気で繰り広げられる会話だけれど、2つの背中は王子のつまみ食いを許さない。だからこその、襲撃なのだけれど。
「あのー、ミーはいいこと考えたんですガー」
「うるせーよ、んなこと考えたんなら手伝えよ」
「あのふたりに交渉するより、直接贈られ主に交渉したほうが成功率高くないですか? 見たところー、堕王子なんかー、ボスの中ではお願い聞いてあげるランキング二位なんじゃないかとミーはオモイマスがー?」
 しれっと言う少年の頭にぐさっとナイフが刺さる。頭と言っても直接に、ではなく、頭にかぶっているカエルの形をしたかぶりものに深々と、特殊な形状のナイフが刺さっているのだ。ヴァリアー内ではここ数年、見慣れた光景ではある。
「馬鹿カエルにしちゃいい考えじゃねーの」
「それに気が付かない堕王子が馬鹿なんじゃねーの」
「来いバカ」
「ミーはバカじゃあっりっまっせーん」
 そういうフランの首根っこを引っ掴んで、王子はこっそり、談話室から出ていく。まだ何か言い出しそうなクソ生意気な後輩を連れて、王子は部屋に戻るつもりだ。とりあえず今は退散。作業中の二人は集中しているし、手を出す余裕がまったくないので、見ているだけ無駄だからだ。頼りない相手だが作戦に欠かせないコマであることは確か。強欲の赤ん坊ほど金食いじゃないぶん、楽は楽だ。金の分、口は悪いが。
「で、その姐さんと作戦隊長、いったい何シテるんデスカー?」
「さっき言っただろ覚えてねーのかよバカカエル」
「バカバカいうほうがバカだって教わらなかったのかよ堕王子。スイマセーン、ミーは貧乏人の子沢山なので、おっしゃってた意味がワカリマセーン」
 貧乏人の子沢山ってなんだそれ、おめーのいた黒曜のことか、つーか子沢山ってことはおめーらみんな骸のガキってことか? 何それ気持ち悪っ!
 王子はこの半分くらいの悪態を実際口に出して言ったが、相変わらずのれんに腕押しな後輩の幻術士の態度はいつもと変わりなく、表情も抑揚もかわらないままだ。それにしてもフランの語彙って不思議だよなぁ、時々ベルフェゴールはそんなことを思う。妙に世帯臭いというか、なんだか、…なんだろう。
「オカマとセンパイが作ってるのはマロングラッセだよ、ヴァリアーのアジトでとれた栗で作ったヤツ」
「それってなんですが?」
「おま…」
 純粋に何も知らない風情で、霧の幻術士が無邪気に堕王子ベルフェゴールに質問する。なんだかその様子があまりに哀れに思えてきて、なんでこんな説明しなくちゃいけねーの、そう思いながら結局、そのむかしまだ子供だった時分によく作ってもらったレシピをそのまま、王子はこの後輩に教えてやっていた。
 そういや王子がまだ本当に王子だったころ、そのお菓子は秋の一時期だけ食べることを許されるものだった。そうだなぁ、王侯貴族の俺様だって毎日食べるわけにはいかなかった代物だもんな、貧乏人のおめーなんか一生一度くらいしか口に出来ねぇだろーな。


 取った栗を洗って泥を落とし、浮いたものを選別してからお湯につけて皮を柔らかくする。少し冷めるまで置いてから一番外側の鬼皮を剥く。ナイフで切れ目を入れ、あとは指で剥くと傷がつかない。今日は二人揃っているので、スクアーロが栗の底のほうからナイフを入れてくるりを皮に切れ目を入れる。それをルッスーリアが綺麗に磨いた爪先が痛むのも構わず、ぱきぱきと鮮やかに鬼皮を剥いていく。
「ホントスクちゃんナイフ使うの上手だわーん」
「あったりめぇだぁ、仕事道具だろぉ」
「首切るつもりで皮剥くんじゃないわよぉ」
「年に一回だから勘が戻らねぇよ」
「そうなの?」
「そらそうだろぉー」
 口で喋りながら手が動くのは女性の脳味噌だというが、ルッスーリアはともかくとして、スクアーロが案外それを器用にこなすのは不思議なことだ。
 ざっと見てあきらかな虫食いは選別してあるが、皮を剥いてようやくわかるものも多い。なんといってもこれは最高の秋のごちそう、虫も猪も鹿も熊も人も食べたがる実りの果実だ。一本の栗の木があれば家族四人が一冬越せるだけのカロリーとビタミンを含むとなれば、争奪戦も熾烈を極めるというもの。外側が綺麗でも中身は黒かったり、腐っているものもある。それらを選別しながら、てきぱきと作業は進む。
「けっこうよけたつもりでいたけどよぉー、虫食ってるなぁー」
「そうねぇー、でも大きくていい形してるわ」
「そうだなぁー、去年のよりも丸いぜぇ」
「ウフフ、楽しみね」
「うまいけど作るのがめんどくせーんだよ」
「しょうがないわ、時間がおいしくするんだもの」
 栗の鬼皮は固いが、熱い湯につけて剥けばかなり楽につるりと剥ける。渋皮煮ならそのまま砂糖で煮含めるが、マロングラッセはさらに手をかけてもう一枚、渋皮まで綺麗に剥くのが肝要。だからこそ綺麗な形が必要で、この段階ではなるべく、火が通らないほうがよい。
 綺麗に剥いた栗を、今度はひとつひとつ、グラシン紙で包む。煮崩れを防ぐためだ。
 この段階で山のように鍋に入っていた栗のカサは三割以上減って、いかな豪腕を誇るルッスーリアといえど、いい加減イヤになってくるほどだ。
 立ってするには場所塞ぎで、テーブルに山盛りの栗を置き、座って作業を続けることにする。ラジオをつけて小さく音楽を流しながら、明るい秋の日差しの中でせっせと二人、していことが栗の皮むきだとは。
「剥くの上手ねぇ」
「あ? そうかよ」
「アンタそういうことはなんか上手いわよね。細かいこと苦手なくせに」
「これくらい大したことねぇだろぉー」
 そんなことを言いながら、よどみなく動くスクアーロの爪の間に、固い栗の皮が入ってしまう。ああ、またそんなことをして、ボスに怒られたりするのかしら。それとももう、怒ったりはしないのかしら。
 うふふ、唇に登る笑みの理由をスクアーロは気にしない。それよりも目の前の栗のほうが重要なのだ。なにしろこれはまだ序の口、これからが本番なのだから。

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迷彩教室・4

「ショウイチ、久しぶり」
「久しぶりってこの前も会ったじゃないか」
「そうだっけ?」
「そうだよ。それに毎週チャットしてるだろ」
「今ここにいるのは生身のショウイチだろ。チャットは別」
「そうだけど」
「はい」
 友人はいきなりそう言って駅ビル1階の食品売場の袋を渡してきた。中にはサンドイッチが二つ。値引き販売の赤いシールが貼ってある。
「一個じゃたりないかと思って」
「嬉しいよ。食べてもいい?」
「どうぞ」
「食べる?」
「待ってる間に食べた」
「そう」
 話をするのももどかしく、袋をパリパリと開ける。駅ビルの食品店のサンドイッチなんて、高校生には高嶺の花だ。最近近所に再開発でビルが建って、マンション住民が増えたから、駅ビルの食品街は激戦なのだ。金銭的に不足気味な学生は常に出遅れる。
「何か急な用事があるのかい? チャットじゃ駄目だったのかい」
「そう。ショウイチに会わないとね」
「そうなのかい」
「顔、見ないと。忘れちゃいそう」
「ウェブカメラつけてるだろ?」
「そうだけど、それ見てる?」
 友人に詰め寄られて言い淀んでしまう。確かにチャットしてる時はプログラムを組んでいたり、お互いにそれを治したり確認したりしているから、画面は見てるけど相手の顔なんか見ていない。部屋が明るいわけでもないし。だから今、目の前にいる友人の顔をきちんと見るのは確かに久しぶりだ。
 鮮やかな碧玉の瞳がビー玉みたいだな…と、いつも思うことを今度も思ってしまう。染めているわけではないのに薄い茶色がかった髪の色も綺麗だ。うん、たぶん、友人は一般に言うところのそこそこ顔のいい男、なんだろうなということくらいは自分にもわかる。
 ほとんどみなりを構わないのでわからないけれど。多少あっさりしすぎているところはあるのではないか、と思うことはある。イタリア人なのに。それは自分の偏見か?
「見てない…かも」
「ウチが見たかった。あと」
 細い、すらっとした指が僕の胸の中心をトン、と突く。友人の癖だ。僕の体を指で触るのは。
「ちゃんと見てるかなって思って」
「見てるよ。別に問題ない」
「問題ないの?」
「た、たぶん。僕はそれほど知らないから、問題あるのがどういうことなのかわからない、し」
「そんなことない。知ってる、はずだろ」
「見聞きしてないことは知らないよ」
「見聞きしてるよ。忘れたの?」
 エメラルドの瞳が僕を見る。友人は人を見るときはまっすぐ目を見るのだ。犬か猫のような友人の瞳にはいつも、ほとんど感情が閃かない。それとも僕が、そこにそれを読み取れないだけだろうか?
「ホントはこんなとこでショウイチに会うのも駄目らしいけどね。ま、ウチは知らないから」
「えっ? そうなの?」
「何がトリガーになるかわからないって言われたじゃないか」
「…そうだけど、そもそも僕ら関係ないじゃないか」
「そうだね」
「キミが行くって言い出したんだろ?」
「ついてきたのはショウイチだ」
 ああああ、それを友人に言われると心底僕は弱い。別に友人は僕を責めているわけじゃない。純然たる事実をただ言ってるだけだ。僕は二年半前の自分の好奇心を心底呪った。
「そうだけど」
「まぁしょうがないとはウチも思ってるから」
「うう…それ慰めてんの?」
「慰めてる」
「そう」
 話ながらサンドイッチはたちまち自分の腹の中に消えた。最近あまり胃が痛くならなくなったので、これくらいなら問題なく食べられるようになった。背も伸びたし、体重も増えた。友人ともそれほど身長に差がなくなった。
「それは別にしてもウチ個人的にすごく興味はある。あっちでは手を作ってくれとか言われたこともあったし、結構あちこち触らせてもらったこともあるし」
「そうなんだ? 僕知らなかったよ」
「そう? ちゃんとアッチのショウイチにも報告したような記憶があるけど」
「覚えてないよ」
「ショウイチが研究に関係ないことすぐ忘れるから」
「おまえほどじゃないよ!」
「ショウイチほどじゃない」
 これ以上は不毛な会話になるな、と僕は思った。
「他に用事あるの?」
「あ、これ。渡しとけって」
「なに」
 友人がバックから皺になった封筒を出してくる。それを受け取って中身を確認すると、どっと肩から力が抜けた。
「こんなもの持ってくるなよ…」
「ウチに言われても困る」
 お互いにそれを持て余していることは知ってる。知ってるけどこれを僕に渡さないといけない友人の気持ちも判るし、それを友人に渡した人の気持ちもちょっとわかる。ちょっとだけだけど。
「じゃ、そんだけ。またチャットでね」
 駅の広場にある時計を見た友人がそう言って話を切り上げた。あわてて僕もそれを見たらかなり時間が過ぎている。塾の時間に遅れてしまう。
「あ、塾に遅れる。僕も行くよ、あ、サンドイッチありがと! いくらだった?」
「今度おごってくれたらいいよ。急ぎなよ」
「スパナは塾行ってないの」
「ウチはこれからだから平気」
 そういって友人は背を向けて駅へ。僕は駅前に停めていた自転車を引っ張り出して、駅の反対側にある塾に向かうべく、自由通路へ自転車を引っ張りあげた。

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