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通販開始と在庫について

5月3日発行の「暁と黄昏の十二時間」の通販開始しました。
まだページ案内が出来ていませんが、フォームと通販カートは稼働しております。
通販カートの方に追加出来ませんでしたが、「百獣の王百花の王」が6冊、「24Hours365Days」が2冊ほど出てきましたので、ご希望の方はメモ欄に記入お願いします。
内容については通販ページの過去本のページかpixivのこちらこちらを参考にしてください。
新刊の最後に載せよう!とおもっていたオチをイベント翌日になってから思い出すとかもうなんか駄目ですなー……HAHAHAHA……

連休中は暇だったのと天気がいいのか悪いのか暑いのか寒いのかよくわからない天気だったので、さっそく在庫を追加印刷したり、製本したり製本したり断裁機を調べてぐわーってなったり畑に行って夏野菜の準備をしたり網をかけたり花がらを摘んだり地面掘ってゴーヤを植えたりしてました~。

イベント翌日にガチで12時間寝てしまってびっくりです。マジかw
ちょっと夏まで時間があるような気がするんですがこれも多分気のせいですね…!!

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SCC21に来ていただいてありがとうございました!

SCC21にお越しくださった方、ありがとうございました!
当日は東京は豪雨といっていい凄い雨で、一般の待機列も大変だったと思います。そんな中、わざわざお越しくださって本当に有難うございます。
新刊も何とか発行できました。多くの方に手にとっていただき、大変嬉しく思います。午後になって来ていただいた方には、完売してしまって申し訳ございませんでした。
通販は早々に開始しますのでよろしければご利用くださいませ。

差し入れも色々ありがとうございました。お話してくださった皆様もありがとうございます!
ポメラの新型触らさせてもらえたのが本当に嬉しかった!前の型も弄ったことがあったので、比較出来ますね~^。いや~新型凄いイイですね!! あれは危ないシロモノですなー、起動早いしキーボードちょうどいい大きさだし見やすいし。バックライトいいな~~!!
思ったより体調もよくて3月より元気でした。帰りはユザワヤに突入していってロクなもん買わずに帰ってきてしまい、帰宅してから後悔の嵐だったという…頭動かないと決断できなくていけないですね。

冬コミから懸案だった続きが出せてよかったです!
これでかなりスッキリ。
もうちょっと計画的に原稿を…と毎度思いますが今回もちょっとまずかったので本当に反省します…ううっ…。

二日目やコミティアやオンリーに参加してる皆様の様子を伺えるのがなんか楽しいですね。コミティアは行きたかったけどそのためだけに上京するのはちょっと難しいかなぁ…。

差し入れもいろいろありがとうございました!毎回本当にありがとうございます。嬉しいです…新刊終わってしまってすみませんN様…。
あとめったにイベントに来ない人にも会えて嬉しかったです。毎度ながら紙も買えた!!
感想などもありがとうございました。一人でちまちま本を作っていると、時々煮詰まることもありますが、続けていてよかったとイベントに行くたびに思います。楽しんでいただけることを知ることは本当に励みになります。ありがとうございます。
今後もぼちぼち続けて参りますので、よろしければお付き合いくださいませ。

そういえば今日は雲雀さんの誕生日。
誕生日おめでとう!
この人高校受験とか大学受験とかするんでしょうかね…??
なんか大学はさらっと海外行ってそうな気がしないでもない。

あと当日いただいた差し入れ。
傷まないよう冷蔵庫にINしたものもありますが、いつもありがとうございます!!
いただいたお菓子の中にあったハートのビスケット。
カワイイwww

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暁と黄昏の十二時間・サンプル・2

 結論から言えば、匣兵器は驚くほどあっさり見つかった。

 イースターエッグを探すのよりも多少面倒な手続きを経て、たどり着いたそこで手に入れた匣の中身はこれから得るはずなのに懐かしさすら感じるそれで、投入した炎に反応した音すら郷愁を感じてしまう。
 そんなことはない、これはみな「これから会う」べきものだというのに。

 二度目の匣生物の生育は非常にスムーズで、未来の世界では手間取った孔雀の孵化もミンクの餌もライガーの躾も、今度はひどく簡単で、拍子抜けするほどだった。
 未来の世界では半年近くかかったライガーの成体への変態もわずか五日で過ぎてしまって、物足りない意見が噴出したほどだ。

「まさかこんなに早くこいつがここにいることになるとはなぁ……」

 談話室に続くキッチンで、人参の皮を剥きながら、スクアーロは呆然とつぶやく。
 その隣で戻したドライトマトをみじん切りにしているルッスが、そうねぇと鷹揚に同意する。
 スクアーロは返事をする前に、足元で子供が泣くような声が上がる。
 視線を下ろせば、フローリングの床の上に、ちょこんと鳥が一羽、尾羽根を垂らして佇んでいる。
 蛍光のグリーンとブルーの飾り羽にブラックとブラウンの目玉模様の尾羽根はまだ短いが、羽先を床にこすらぬよう、姿勢よく尻をあげてスクアーロの足に長い首をこすりつける、その仕草はまるで猫のようである。
 しかし二本の足は太くてたくましく、爪は鋭くて長い。
 普段はめったに鳴かないが、威嚇や要望があるときだけ、まるで人の声のように鋭く、一声だけ声を上げるのだ。
 いまはまだ子供なのでくちばしもそれほど頑丈ではないが、成鳥のそれはかなり強力な武器で、毒蛇すら突き殺す威力がある。
 クジャクはその麗しい外見に大抵の人間は騙されるが、実際はかなり悪食で凶暴だ。その鳥を模した匣兵器であるところの晴孔雀が、スクアーロの足元で優雅に侍って立っていた。

「こいつしまっておかねぇのかぁ?」
「あら出てたね、クーちゃんったら。羽が料理に入ったら嫌だから、しまうわね。さ、クーちゃん」

 手を拭いたルッスーリアが、エプロンの下に手を入れて匣を取り出して蓋を開ける。かすかに鳴きながら極彩色の孔雀がその中に消え、パタンと勝手に閉じてしまった。

「そいつはまだ小せぇなぁ」
「そりゃそうよ。まだ大人になったばっかりよぉ」
「あれくらいになるにはどんだけかかるんだぁ?」
「そうねぇ、あとしばらくはかかるんじゃないのかしら。毎日お手入れしてるけど、どうなのかしらねぇ。前は一夏越さないと駄目だったけど、今回はそんなにかからないと思うわ。本当なら、孔雀って、夏を越えないと駄目なんだけどね」
「そうなのかぁ?」
「クーちゃん、今はまだ目玉の羽が少ないでしょ? 孔雀は大人になるにつれて目玉の数が増えるの。だいたい六つくらいになると一人前らしいわ。クーちゃんはまだ子供なの」
「そーいやオマエのまだ一つしかねぇな」
「これからどんどんキレイで立派になるかと思ったら、オシャレにも意欲が湧くわねぇ」

 そう言いながら刻んだトマトとオリーブオイルをかるく混ぜて味を整え、冷やしておいたモッツァレラチーズと生ハムに回しかけてゆく。
 別の皿にはバジルペーストにアンチョビを入れたディップにコルシーニのグラッシーニが準備され、酒のアテとして整えられてセットされた。
 それを、目的地まで持っていくのは今のスクアーロの役目だ。

「はい、できたわよー、持ってって」
「おう」

 答えながらしかし、普段よりどうにも、スクアーロの動きははっきりしない。彼のボスのところに酒のつまみを持って行き、そのままボスの部屋で朝まで過すのが、ここ最近のスクアーロの日課になっていることを、ヴァリアーの幹部は全員知っている。
 なのに当の本人が、まだエプロンも外さずに、どうということをしながら、キッチンの中でうろうろしているのだ。

「……、行かないの?」
「あー、……うん……、……」

 水を向けたルッスーリアの言葉に答えるのにも、ひどく歯切れが悪い。

「早くしないと怒られるわよ」
「それはねぇ」
「…ないの?」
「あー、まぁなぁー」

 そんな答えを返すのは本当に珍しい、とルッスーリアは思う。
 おかしな話ね、最近ボスはとても優しいわ、この子に対して。
 だって奥の部屋からは怒号も悲鳴も呻きも聞こえないし、目の前の男の肌はいつもキレイでツヤツヤしていて、髪も目も唇も何もかも、愛されている潤いに満ちてとても綺麗だというのに。

「どうしたの。具合でも悪いの?」
「そうじゃねえけどよぉー、…なんか」
「何よ」
「……ボスのとこ行くの、なんかこぇえ」
「……なんで?」

 これは思わぬ言葉が出たものだ、とルッスーリアは驚く。まさか怖いなんて言葉がスクアーロから出るなんて、どういう風の吹き回しだろう。いや、違う、ボスに対してだからこその言葉なのかしら。

 昔から、スクアーロは怖いもの知らずの子供だった。肉体的にもそうだったが、とにかく精神的にタフで前向きで、ストレスを溜めにくい考えをする子供だった。基本的にむやみにものを怖がるようなことをする子ではない。慎重ではあるが、恐れとは無縁に見える子供だった。

 けれどそうだ、ボスが相手なら。スクアーロが初めて感じた恐れというもの、それがゆりかごなのではないだろうか、とルッスーリアは思っている。言葉にして口に出したことはないが。

「何も、されないのが、こぇえなぁ」
「あら、スクちゃんは、ボスに殴られたり蹴られたりするほうが好みなの?」
「そういう意味じゃねえけどよぉ」

 こんなに愛されてつやつやプルプルの肌をしていながら言う言葉じゃないわ、とルッスーリアは内心で溜め息をつく。

「なんか、…あんま、こう……なんか…違うもんになりそうでよぉ……」
「ボスが?」
「違ぇ」

 そこだけは妙にきっぱりと、スクアーロは返事をした。

「ボスさんがどんなになったって俺には関係ねぇよ。ただついてくだけだぁ」

 ということは。

「スクちゃん、それって」
「わかってらぁ」

 スクアーロはルッスーリアに先を言わせない。

「ボスはどんなになったってボスだぁ。…だけど、なんか、俺、俺じゃねぇもんになっちまいそうな気がすんだよなぁ」
「…それってどういうことかしら」

 なんだか聞くだけ無駄のような気がするわ、ルッスーリアはそんな予感を感じている。

「だってなんか、おかしいだろぉ…。俺はそんなことされる価値がねぇからなぁ」

 そう言いながらスクアーロは、床をじっと見つめて、そして顔を上げてからエプロンを外した。

「価値って」

 そんなものは必要だろうか。
 ただ傍にいたいから、いてほしいから引き寄せて抱きしめるだけ、それ以上の意味なんかあるのかしら?
 それにボスにとって、スクアーロの価値は計り知れないことくらい、本人以外はみんな知ってると思うけど。

「遅くなると機嫌悪ぃからなぁ。じゃ、おやすみ」
「おやすみなさい」

 手早くエプロンをたたんで、スクアーロは色とりどりのつまみを載せたトレイを持つ。
 キッチンを出ていく気配が消えてから、ルッスーリアは肩をすくめた。

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ひゃっほーい!

この時期ここに来て風邪引いたとかそんな…
なんか体調悪い…と思ってたら熱があるとか詰む ヤバイ
とか思っていたところにすんばらしい情報が解禁されました。

2013年2月11日月曜祝日
ヴァリアーオンリーイベント「MEGAVARIAtion」の開催が決定いたしました!!!

5月3日のSCCからフライヤー配布が始まるようです!!

☆⌒ヾ(*゜∀゜)ノヒャッホォ-ゥ♪
嬉しすぎます!!!!楽しみです!!!!

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暁と黄昏の十二時間・サンプル・1

 夜の食事は明日への活力。大抵の人間にとって、一日の中で一番楽しみにしている時間である。食事は人生の享楽、家族の絆を確かめる大切なもの、それには時間も量もたっぷりかけるのがこの国の常識だ。享楽的なローマの影響を受けた国では大抵の食事はそういうものであるし、それはもちろんイタリア本土のみならず世界各地に支部をもつマフィアの王、ボンゴレの最大の暗部である悪魔の根城であるここ、ヴァリアーのアジトでも例外ではない。
 他人同士の親睦を深めるのに、食事は一番手っ取り早い方法でもある。毒物の心配のない食事をふるまうのは家族である証拠でもある。マフィアにとって食事は神聖なものだ。同じテーブルを囲むということの意味は、円卓の神話や最後の晩餐の例ををひくまでもない。

 暗殺部隊の朝は遅い。

 少し前に日本での十代目継承式から戻ってきた幹部たちは、激減した隊員たちの世話をするのに忙しくしている。
争奪戦で一気に半分以下に減ってしまったヴァリアーの人員は、今は更に減り、部下の数は幹部一人あたり二十人程度しかいなかった。中にはいまだ怪我で動けないものもおり、不足の人員の補給は、火急の案件でもあった。

(中略)

 遠い異国の地で秘密裏に行われたボンゴレリングをめぐる因縁の戦いが、長年の禍根を残したまま、密かに終わってから――ようやく一ケ月がたとうとしている。
 ヴァリアーのアジトは戦火で残った中世の城を改築したもので、天井が高く、窓が小さい。元が城下町を擁する要塞の城なので、街並みを見下ろす高台に立っていて、現在ではその姿を木立に隠し、容易に全容を見せることはない。
 その建物の二階の中ほどに、幹部のための談話室がある。そこまでは一般隊員も普通に入ることが出来るが、それ以上先は、特別な認証が必要になる。
 談話室の続きにはかなり広い食堂があり、そこに幹部一同集まって、夕食を共にするのが彼等の習慣であった。そこに彼等が長年待ち望んでいた王が鎮座するようになってから、まだそれほど日がたっているわけではない。
 晩餐の時間に一日の進捗具合を報告するのが、誰が言い出したわけでもなかったが、いつからかヴァリアーの幹部たちの習慣になっていた。
 今はちょうど、午後になってから入院している部下のお見舞いに行って戻ってきたレヴィの報告が終わり、ザンザスに回ってきた手紙や書類の裏をとっていたスクアーロが、それについて報告を終えたところだ。

(中略)

 テーブルではかすかに食器のあたる音がする。
 左手が義手のスクアーロは、どうしてもカトラリーを扱う時にあちこちにぶつけてしまうので、完全に音をたてないわけにはいかない。
 これでも八年前とは雲泥の差で、当時はしょっちゅうナイフを落とし、フォークで食べ物を口に運ぶことも満足に出来なかったこともあった。

 ……そんなことを、食事中に唐突にザンザスは思い出した。

 それは本当は、ごくごく最近の出来事だった。
 なにしろ、ザンザスはつい二月ほど前、『目覚めた』ばかりなのだ。
 九代目ボンゴレボスの持つ死ぬ気の炎によって、八年の長き時間を十六歳のまま封じ込められていた地下室から、どうやってかは知らないが、解放され、再び暗部の王として君臨するようになり、最後まで自分についてきた小生意気な糞餓鬼が、美貌の暗殺者に育ってしまったのを見て、心底驚いてしまったあの日から。
 なのに、今のザンザスには、満足に食器が使えず不器用に、失ったばかりの左手でたどたどしく食事をしていた十四歳のスクアーロを、向かいの席から内心ハラハラしながら眺めていたことを、とても遠いむかしのできごとのように思っているのだ。
 十年分の『新しい』記憶が、失った――もとより存在しないものを失った、と称することには異論はあるが、しかし他に適当な言葉が思いつかない――八年を埋めるように存在して、空虚な気分を埋めていることを感じている。
 それはまったく経験のない記憶ではある。
 だが、体感として『知って』いることでもある。
 不思議なことだとも思う。
 同時に、ひどく厄介なことだ、とも思う。
 自分にとっては少なくともそうだ、とザンザスは認識する。
 では他の人間にとっては?

「……あとは招待状が来てたなぁ。耳聡いヤツもいたもんだぜぇ、もうボスさんにパーティに出てこないかって聞いてきてるぜぇ」
「目端が効くわねぇ」
「早ぇな」
「あれ、なんでそんなもん来んの? 本部から回されてきたの?」
「まぁ、そういうことだなぁ。……俺が継承式に顔出したのがまずかったのかもしれねぇなぁ」
「なんでさ」
「いままでヴァリアーは、公式の行事に顔出ししたことなかったろぉが」
「それもそうね」

 ザンザスが凍りついていた八年の間、ヴァリアーは確かに存在し、仕事もしていたのだが、関係者はほとんど公式の場に顔を出すことをしなかった。
 そのため、ボスであるザンザスの死亡説まで流れたことも一度や二度ではない。
 ヴァリアーの存在そのものを疑われたこともある。
 しかしそのヴァリアーが――代理とはいえ、幹部が全員、日本での十代目の継承式に顔を出したのだ。
 それはボスであるザンザスが「生きている」ことを、公式に認めたようなものだった。
 そこにつけこんでくる輩は多い。
 いい意味でも、悪い意味でも。

「パーティの招待状の裏は今取ってるとこだぁ。ついでにアッチの内部事情もひと通り調べることになるなぁ。まぁ、こんな時にヴァリアーにつなぎ取ろうとかしてるあたり、ロクなもんじゃなさそうだが」
「いやぁん、私たちにも選ぶ権利くらい残してほしいわね」
「王子に串刺しにされる権利も進呈してやろっか」
「何かいいネタがあれば買うよ、スクアーロ」

 強欲の赤ん坊は抜かりない。十年後、自分が一度死んで、そして復活したことについ
て、マーモンだけはその仔細をだれにも語っていなかった。それは他の幹部たちにとってはすでに知っていたことであり、もう起こらないことでもあった。
 特にそれを何より悲しんでいた王子にとって、それは起こってほしくないことであったのだろう。
 記憶を与えられた直後から、やけに強欲の赤ん坊に対して優しく接していることを、全員がそれとなく気がついてはいる。
 マーモンもそれについては何も言わないので、それをわざわざ追求するような人間もここにはいなかった。
 悪いことがすでに起こっていて、これから起こる可能性が少ないのならば、それは問題ではない。

「どうでもいいのは無視しろ。ネタが見つかりそうなところは資料を回せ。つなぎを取るかどうかは俺が決める」
「わかってるぜぇ」

(中略)

 ザンザスの前に置かれたワイングラスが空になる。
 ふと気がついてスクアーロがそこに赤ワインを注ぐ。
 注ぐ量は半分より少し少ない。
 ちょうどいいところでついと瓶を引いてしずくをこぼさずに切る、その洗練された動きの美しさはふっと人目をひく力があった。

 むかし、御曹司の給仕をしたいのだとねだる子供に、ルッスーリアがいろいろ、教えてやったことがあった。
 当時に比べると、動作は格段の差があった。
 それは御曹司が目覚めてのち、ウキウキと給仕をしていた時と比べても、動きの洗練の度合いには、圧倒的な差があるように思われた。

 ザンザスはそれに気がついた。
 スクアーロが、どうした、と視線で聞いてくる。
 慣れた阿吽の動作が、過ごした時間の長さを物語る。
 まだ来ない、二度と来ることはない未来の。

「どうしたぁ? 次のはまだだぜぇ」

 かすかに不満をにじませたボスの表情にも、スクアーロは不安そうに伺ったりしない。
 むしろ、ゆったりとした口調で、鷹揚に返事を返してくる。
 ザンザスが眉間に皺を寄せ、ルッスーリアのこめかみに力が入り、王子がフォークを落としそうになり、すんでの所で踏みとどまっていても。

 何かを言おうとして、しかしザンザスは何も言わなかった。
 言わずに静かに酒を飲んだ。
 少し前までは、どんな酒も水のように機械的に体に流し込んでいたけれども、今はゆっくり、香りを味わいながら飲むことが出来る。
 スクアーロが入れたワインはどこか甘いような気がしてしまう。
 あの男が給仕する食事すら、普段より味が違うような心地すらしてしまうのだ。
 そんなことはないと思いながら、それでもいいと思う自分がいることを感じる。
 料理は愛情だという戯言を信じたことなどなかったが、なるほど、最後の最後にふりかけられるのは、確かに愛情でなくてなんであろうか。

 普段通りにしているつもりでも、視線の中に、カトラリーを握る指先に、食事をする唇に、十年の紆余曲折を経た記憶がにじむ。
 それは悪いことではないと、おそらく誰もが気がついている。

 セコーンドの皿は地鶏のクリーム煮。
 放し飼いでたっぷりの穀物を食べて走りまわった鶏を締め、塩をまぶして一日置いたものに香料を詰めるもの。それをコンソメでじっくり煮こんだものに、ゴルゴンゾーラのチーズクリームをくるりと回しかけている。骨ごと煮たからコラーゲンが固まってぷるぷるしている肉の周りを、人と同じように見事にすぱんと切るスクアーロが、温かい肉をボスから順番にサーブする。
 切り分けた淡いピンクの肉の切り口に、とろりと白いソースをかければ、ぐんとハーブとコンソメの香りが漂って、嫌が応でも食欲が増すというもの。

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あいしているよ 

山本とスクアーロ、酔っぱらいの戯言。

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俺はお前をあいしているよ。

ゆめうつつで聞いた声は間違いなく彼の人の声で、でもこんなしずかに言葉をつむげることなど実はほとんどしらなかった。
いや、しってたかもしれない。
はじめてきいた、そう思った次の瞬間、あ、これ聞いたことがある、と思ったからだ。

得物を手にして打ち合うのはひさしぶり。けれどその木の刀の先からでも、互いの過ごした時間がわかる。何を食べて何をして、毎日どうして過ごしていたのか、それこそ手に取るように「わかる」。

それは誰にも説明できない。

なんでわかるんだと獄寺は問い詰める。
こわくないの、とツナは言う。
そうか、それはいいな!と先輩は褒める。
ふうん、委員長は鼻で笑う。
そうか、と父さんはただ応える。

たぶんだれにも説明できない。
俺にも、スクアーロにもそれは出来ない。
でもわかる、わかった気がする、わかってしまう、わかって「いる」。
生活も言葉も世界も年も、全部違って全部知らない。同じなのは性別と、たぶんこの手の中の刀を振るう、その歓喜、その恐怖、その畏れ、そんなもののあれこれに、たぶん二人とも魅入られていること。
一番原始の武器のひとつ、研いだ刃で獲物を切っていたそのころから、たぶんこの体に流れるなにか、血の滾るおそれの何かを、スクアーロと俺は共有してる、と思ってる。
うぬぼれかもしれないけれど。


うん、おれも。


思わず答えた言葉にふっと、笑う気配があって、それにつられて自分も少し、緩んだ唇が笑ってしまう。
いい気分で疲れていて、シャワーを浴びて、酒を飲んで。ベッドにどうやって入ったのか覚えてない、ただ近くにいることはわかる。
スクアーロはいい匂いがする。酒を飲むとそれがいっそう強くなる、懐かしいような、悲しくなるような匂いがする。
自分じゃ気が付かないだろうし、たぶん誰も気がついていない。少し血なまぐさい、それは冷たい魚の匂いだ。
俺が毎日嗅いでいた、生きた魚を捌いた店の、厨房の匂いにそれはよく似ている。

そうか。

こたえる声には焦りはない。ねむくて瞼がひらかない。言葉の半分も声にならない、けれどなぜだか、きっとスクアーロはわかってる、ような気がした。
俺はいつもうぬぼれている。

スクアーロは俺の師匠で、兄で、先生で、憧れで、目標で、夢みたいなもんだ。
それでいて現実で、冷酷で、異邦人で、たぶん全然相容れない人間なんだと思う。
でも惹かれてしまう。ものすごく。全部の存在が、俺の全部の関心をひいてしまう。
強い磁石みたいなもんだ。好きとか嫌いは関係なくて、ただ惹かれてしまう、引き寄せられてしまう、近づいてしまう、そんな存在なんだろう。

オレもあいしてる。

初めてそんな言葉を口にする。半分寝ているから、なんだって言える、そんな気がする。酔ってるせいかもしれない、どんな言葉も口にするのに問題はない、そんなふわふわした気分。

おまえ、それ、おれにいってもいいのか?

いいよ、べつに。だってスクアーロは――じゃん…、オレの。

……そうだな。

そうだな。
スクアーロの返事で、俺はいろいろなことが全部すとんと腑に落ちた。そうか、そういうことだったのかといまさら、いまごろ気がついた。

しってた?
……しってる。
――そうだな。おれにもかぞくはいるが――、それとおなじくらい、おまえのこともあいしてるぜぇ。
…へへへ。うれしい。
…そうか。
……うん。

返事をするのがとてもつらい。口が思った言葉の半分も声にしてくれない。
スクアーロの返事もよく聞こえない。はっきりしない声も返事も、ああ、スクアーロも眠いんだろうと考える。

おまえをあいしてるよ。おとうとのように、でしのように、ぶかのように、あいしてるよ。

うん、……。

返事、したのかなぁ。もう眠くて眠くて、声もよく聞こえない。
スクアーロの声はまるで子守唄みたいで、本当に気持ちがいい。ああ、このまま俺、本当に寝てしまいそう。

だけどなぁ、おまえにゃ悪ぃが、おれのな、……。

スクアーロは何か言ってる。はっきり意味を理解できないけれど、たぶんそういう意味では愛していないと言ってる、んじゃないかと思う。…たぶん。
それも俺の希望的観測。そうじゃないかもしれないけど、でもたぶんそれで間違いない。
それはしょうがないよ、だって俺もツナのこと、大切だし。スクアーロと対して戦うのも、スクアーロと一緒に戦うのも、どっちもものすごく楽しくて、辛いけれどどっちも、本当に刺激的で、うれしくて、俺にとっていいことだってわかってることがわかるから。
それでも絶対、あんたは俺に、こっち来いって言わないこともわかってることをわかるから。
そうしたらこうして、アンタと刀を交えることが出来なくなってしまうってことを、たぶん俺もアンタもしってる、から。
それが惜しいと思ってくれてることが、すごいことだってことも、わかる……から。

わかってるから、また、あそんでくれよな?

遊びじゃないって怒るところまで全部、目に見えるけどそういった。言ったつもりで本当は、口になんか出せなかったのかもしれないけど。

あそびじゃねぇぞぉ、お前なぁ、………

うん、返事、したいけど、もう、限界。
ごめんね、スクアーロ。
おれもあいしてるよ。
母さんみたいに、父さんみたいに。
あいしてるよ。


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すばらしく天気がいいGW

毎日いい天気で凄い連休開始ですが皆様いかがお過ごしでしょうか。
イベント直前でありますが通販の発送が終わりました。おまたせしてしまって申し訳ございません。
イベントの荷物もそれ以外の荷物も出しました!あと一件荷物出せば終わりだ…!
あと少しなので原稿やってきます…今度は落とせぬぬぬぬぬぬ

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出ないと思って何こののんびり感

今週XS出ないから!という話を聞いていたうえ
合併号だからまだあるだろ、というのんびり感で今頃買ってきました。

リボはフランを抱っこするMMが…なんかすごく萌えた…
骸のお父さんぶりがなんかもう…目頭が熱くなる勢いですわ…。
おとうさんがんばってー!!!!
フランに頼りすぎていたようですね、とか言っちゃうおとうさん…
よそのうちに幼女、じゃなかった養女に出した末娘が戻ってきてびっくりするとかおとうさーん!!おとうさーん頑張ってぇえええ!!!という声援を送りたい次第。
雲雀は永遠に厨二だけど、骸は最初から父子家庭だよなぁ…。


以下別作品のネタバレなので折りたたみます。


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そういや誰がベッド運んだの

一階下のスイートにいるヴァリアーさんたちですが(つーかこいつら!なんでいつも一緒なの!同じ部屋にいるの!今が緊急時だってわかってるけどさぁ!)、レヴィとルッスと王子が並んで寝ているベッド、誰が運んだの…??

というか誰がスクアーロの包帯巻いたの、誰がボスの怪我を処置したの??
ボスの雑なガーゼと包帯の巻き方はスクアーロが巻いたのか!? そうなのか?? つーかそうなるとスクアーロの包帯とか誰が巻いたの? ぶっ倒れたのってどういうこと? どっかやった? やっちまったの? 松葉杖どっから持ってきたの~~!??

ふと思うと謎がたくさん…幻術士が最上階補ってるってことは、ヴァリアーの隊員もフォロワーとして数人日本に来てるってことだよね??
幻術関係が一人じゃなく数人で最上階を補ってるってことは、隊員は10人くらいはこっち来てるってことになるのかな…全部で今どんだけいるんだ?
指輪戦の最後でいきなり百人単位で人員が減って、それから補充したとして、まだ新人が大半だってことだよね?? 
その状態で幹部が全員日本に来ちゃって大丈夫なのか~~??
幻術士も実地研修で日本に来てるのかしら…日本に来てるのは新人じゃないよなぁ…??
本国では新人研修真っ最中なのかしら。今ヴァリアーさんどんだけいるのかしら。でも普通に百人程度はいるんじゃないのかしら…。
春なのでちょっとヴァリアーの組織について考えを巡らせるといろいろ滾るわー。
あそこんちのロジスティクス関係どうなってるのかすごく気になるよなー。つーかホテルの修理、してもらえるの??

「おい」
「えー? マジで先輩気絶してんのー?」
「スクちゃん! ちょっと!」
「…とりあえず連絡を」
「あっ、そうね!携帯無事かしら!」
「ボスダイジョブー?」
「視界大丈夫かしら?」
「問題ねぇ。少し切っただけだ」
「ボス、すみませんけどスクちゃんを起こすか、隣の部屋から水とタオルと救急セット、持ってきていただけないかしら」
「………………」
「げっ!」
「起きろカスザメ」
「いでぇ…なんつー起こしかたすんだんぁこんのぉクソボスがぁ!」
「優雅に寝てる場合か」
「う゛ぅ゛~~」
「スクちゃん、動けるなら水とタオル持ってきてくれないかしら」
「スクアーロ、何か持ってくるものはあるか」
「んー?レヴィ、あいつらに連絡してんのかぁー? 電話変われぇ」
「これでいいか」
「ボス、申し訳ありません。傷を見せていただけます?」
「うわー腹痛ぇ~、」
「ベル、動けるか」
「王子平気だけどー、おまえらのほうがヤバくね?」
「傷の血を落とさなくては」
「つーかおまえら二人連れてジャンプしただけで王子死にそうなんだけど」
「ム、感謝している」
「う゛ぉぉぉい! もうちょっとしたら隊員どもが来るから、それまで少し休んでろぉ。今日一杯はもうあいつらは来ねぇからなぁ。少しでも体休めておけぇ」
「あいつらの言うことを信じるのかい?」
「途中から割り込んで来やがったことは気に入らねぇなぁ。だが、あいつらもルールに従って戦う気はあるみてぇだぜぇ。ま、ホントかどうかはわからねぇけどなぁ」
「そうだといいんだけど」
「心配したってどうにもなんねぇぞぉ。ボスさん、怪我大丈夫かぁ?」
「うるせぇ」
「んー、そんなに深くはねぇなぁ。後は俺がやるぜぇ」

とかなんとか言いながらボスの怪我をざっと拭いて洗って消毒してガーゼあてて包帯撒くスクさん…! 本人は元気なつもりでいるんだけど、けっこう疲れてて、左手が痺れててうまく包帯が撒けないとかいいなぁ! ぶるぶる震えてるのに舌打ちする鮫さんと、わかってるのに鮫さんにお世話させるボスさん…なんだな? つまりはそういうことなんですね!??
ありがとう公式!ありがとうザンスク!ザンスクは永遠に不滅です……!!!

もうあれの前後だけで薄い本が厚くなる勢いでいろいろ出ます。出まくります。ふぅ。
もうアルコ編のあれこれだけで半年くらい妄想出来る…ごちそうさまでしたっ!

拍手ありがとうございました! いつもお言葉に励ませております。WJようやく買えましたw 誕生日おめでとうのお言葉もありがとうございます。本誌にヴァリアーさんたちが出ていてホントに嬉しいです…!!!

通販遅れていてすみません。追加増刷した分から適宜発送していますのでしばしお待ちを…!

拍手[6回]

お父さんがんばって

もう今週はひたすら
骸お父さん頑張って
としか言えません…!!
なんかもう黒曜って骸お父さんが男手ひとつで子供(最近一人増えた)を一生懸命養ってる、という感じがしてすごくハラハラします……!!!
ヴァリアーさんはお父さんとお母さんとお姑さんまでいるのであまり心配はしてないんだけど(笑)、黒曜はホントにお父さんだけだからね…!お父さんはお母さんも兼任してるからね……!!
今週一番萌えたのはフランを背負ってる千種と、「別に勝ちたいわけじゃない」と言い切るヴェルデたんですね! マッドサイエンティストっていいですね…ステキ…。(というか黒曜さん、ヴェルデのおかげでなんでもOKじゃね??)

しっかしホント、黒曜さんちの経済状態気になる…小銭というかお金は持っている気がするんですが、あんな人なのに実はすごく真面目に財産管理とかしてそうな感じがあるのはどうしてなんでしょう(笑)。ヴェルデもマーモンとは別の意味でお金もってそう。
でもなんかお金はみんな子供の学資保険に積み立てていて、実際はすごいつつましい生活してるというか…すごくそんな感じがします……。
ヴァリアーさんちも実はけっこう堅実な生活してる気がするんだけど、黒曜さんちは堅実というか質素だけよね…服はいつもしまむらで買ってるよ、みたいな質素さがあるというか(g.uじゃないのはやっぱりちょっとパンキッシュだから、かな?)。

ヴァリアーさんちもたぶん仕事で日本とかフランス行くたびにユニクロで買い物してると思うよ…(笑)。全員ヒートテック着てそう。つーかシャツとかユニクロでユニフォームシャツとか作って支給してそう…。
つーかユニクロはイギリスとフランス以外にも支店出してるのかな? なんかヴァリアーさんちはGAPは着ないけどユニクロは着てそうな気がする(たぶんカラバリのせい)。

本誌どうでもいい話ですね(笑)。


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