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まちで話題の白い花

図書館から戻ってくると、家には客がいた。

「Buon giorno」
「おかえりー」
「お邪魔してます」

少し離れた図書館まで、週に一度歩いていくのがザンザスの習慣になっている。ここのところ寒さが厳しく、朝の散歩が辛いので、昼間の外出を車でなく歩きに替えて、運動量を補っているところなのだ。
湿度の少ない田舎の暮らしは悪くはない。
今日も朝から日差しが明るく、雲ひとつない空から降り注いでいる。
窓から入る光で建物の中はまぶしいほどだ。
キッチンから続くダイニングに、鋳物のストーブを備え付けてあるこの洋館は、家に誰かいるときは、冬の間はずっとストーブに火を入れている。
ザンザスは散歩が終わった後は二時間くらい、電子端末で世界中の新聞を読んでいる。日本の新聞は毎日配達してくれるので便利だと、さっそく経済誌と地元新聞を取っているくらいで、その習慣は若いときからほとんど変わらない。
スクアーロは午前中に出かけていたが、昼には戻ってくると言っていたことを思い出す。
天窓の光の入る場所に、シーツとタオルがロープにかけて干してある。
この家で一番大きなキッチンのテーブルにいるスクアーロの向かいに、見たことがない客がいた。
ザンザスはサングラスを外しながら、その客に挨拶をする。
年齢は自分たちより少し上といったところか。年齢の割に姿勢がよく、スタイルも悪くない。その年齢の日本人にしては背が高い。スクアーロより少し低い程度だ。
髪がそれほど白くないので非常に若々しくみえる。実際、若いときはかなりの美形だっただろう面影も残っていて、すっきりとした目鼻立ちはなかなかに見ごたえがあった。

客はすっと立ち上がる。
スクアーロがその客をザンザスに紹介した。ザンザスには覚えにくい、かなり古風な名前だった。真正面からきちんとザンザスの目を見て、視線を合わせてにっこり笑う。
ちょっと引き込まれてしまうような魅力があって、ザンザスは少しはっとなった。
すっとさし出した右手は予想以上に大きい。指の関節が太く、手のひらが非常に厚かった。
自分でも手のひらが大きいと思っているザンザスと同じか、それ以上の大きさがあるのに、ザンザスは少し驚く。何か手を使う仕事をしていたのではないのだろうか。

「はじめまして。お話はいつも聞いてます」
「はじめまして。こいつは煩いでしょう。世話をかけているのではありませんか?」
「声が大きいので、耳が遠い人でもよく聞こえると評判ですよ」
「んだぁ? なんだってぇ、おまえらんなこと言ってんのかぁー!?」
「時々ね。スクアーロさんは人気がありますよ。とても」
「カスだからな」
「あ、着替えたらお茶飲むかぁー?」
「ああ」
「持っていこうかぁー?」
「いい」
「そっかぁー。じゃ、準備してるぜぇー」

握手をほどいて二階に上がる。手伝おうか、と客人が声をかけるのが聞こえる。
なかなかどうして、こちらも相当、しっかりした声の持ち主と思えて、のびのよい声が吹き抜けにろうろうと響くばかり。
まだ階段の上り下りには心配はない。そうでなくてもこの洋館は、日本の家にしては広くて緩やかな階段が備え付けられている。切り返すための踊り場まであるのだ。

スクアーロが家に人を呼んでくるのは非常に珍しい。
今までに何度か客がやってきたことはあったが、それは全てボンゴレの関係者ばかりで、つまりは旧知の知り合いばかりだったのだ。
ヴァリアーを引退して何もかも置いてきて、イタリアから日本にやってきてから、そろそろ一年が過ぎようとしている。
思ったよりも日本の生活には早く慣れることが出来た。高齢化が進んでいるのはイタリアも日本も同じで、女性が強いのも同じようなものだった。スクアーロは地元の女性陣に気に入られているらしく、何度か集まりに呼ばれていったこともあるようだった。だが、家に招いてきたことがほとんどなかった。
何か荷物を持ってきたついでにちょっとお茶をして帰るということはあったが、用もないのに家に呼んで来るというようなことは、今まで一度もなかったことだったのだ。

服を軽く着替えてから下に向かうと、キッチンのテーブルで二人して、しきりに話を続けている。内容はほとんどが庭の花の話や、野菜の作り方、料理の方法などで、今はスクアーロがルッスーリアから教わった料理を熱心に教えているところだ。
年を取ると女も男も話の中身が変わらないな、そんなことを思いながら飲み物を頼む。
ザンザスのお気に入りの配合で入れられたカフェを飲むために、テーブルのすみに腰かけた。

「そういえば、――は、若いときイタリアに何回か行ったことがあったそうだぜぇ」

スクアーロが話を振ってきたので、そうか、と応える替わりに視線で答える。

「ドイツには二年ほど住んでたので、その時に何度か」
「へぇー。あ、そっか、おまえんとこのがイタリアにいたんだって言ってたよなぁ? ――は、若いときはサッカーの選手だったんだってよぉ」
「キーパーか」
「え?」
「そうだぁ、ゴールキーパーだったらしいぜぇ」
「よくわかりましたね」
「手だ」
「あ」

ザンザスが客の手に視線を投げる。体の割に大きな手、手のひらが厚くて関節が太い。ゴールキーパーは手が長く、手のひらが大きいほうが向いているとされている。

「ブンデスリーガーに?」
「ええ。少し」

そういってはにかむように答える。スクアーロがほおっとした顔でザンザスを見ていた。
それを見届けて、客が少し笑う。

「じゃ、俺帰るよ」
「おお! 今日はありがとうなぁ!」
「じゃ、苗ありがとう。ジャムもありがとうな」

上着を着る客を見送って、玄関までスクアーロが出て行く。そういえば車がなかったな、とザンザスはさっき通ってきた場所を思い出す。
玄関の脇には自転車もなかったから、歩いてきたのだろうか。
家の外で挨拶をする声。門まで見送ってきたスクアーロが戻ってくるのに、少し時間がかかった。

何をしに来たんだ。
「うちによぉ、薔薇植えたのがあるだろぉ? あの枝少しくれって言われてよぉ。挿して植えたいらしいぜぇ。あと苗買ってきてもらったから、それ持ってきてもらったんだぁ」
苗?
「増やしてるんだとよ。なんだったかなぁ、綺麗な赤い花なんだぜぇ」
名前くらい覚えろ。
「確かメモがあったはずだぜぇ…日本の植物のタグにゃ、学名が書いてあるからよぉ、ついそっちに目が行っちまうぜぇー」

そういいながらザンザスの前に、小さい紙の包みが置かれる。

「土産だとよ。なんとかもちだって」
「餅しか合ってないじゃねぇか」

ぽかりと小さい頭を叩く。あまりに小気味よくいい音がするのが、可哀想になるほどだ。
淡い紫のつつみを開けると、中からうっすらとピンク色の白いものが現れる。

「なかにいちごが入っているそうだぜぇ」
「いちご大福か」
「そんなもんじゃねぇのかぁー?」

昔はスクアーロは自分が先に食べ物を口にするまで、一切ザンザスに食べ物を食べさせなかった。ザンザスも疑い深く、人から貰った食べ物にはほとんど口をつけなかった。

今はそんなことはない。

二人でつつみを剥いて、同じタイミングではむっと食べる。同じタイミングで目を合わせれば、スクアーロは嬉しそうににこっと笑う。

「これうまいなぁ! ちょっと甘くねぇけど、おいしいぜぇ!」

ストーブの輻射熱で、干しているシーツがゆらゆらと揺れている。
少し日が翳って、吹き抜けの明かりが減る。
外は乾いて晴れている。雲もない青空が高く遠く、ただ広がっている。

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一日遅れましたがスクたんおめでとう!

拍手[8回]

ねこいぬにゃんこ

「スクアーロってネコじゃねーかなー」

テレビではイギリスの教育番組が流れている。
アフリカのサバンナ、猫科の大形肉食獣の生活を撮影したドキュメンタリー。
ナレーションはたんたんと、固体識別番号としての名前をつけたその動物の生活を追いかける。
一人で、たんたんとえさを探し、水を飲み、木に登り、においをかぎ、繁殖の相手を探しに遠くへ歩き、数年に一度の繁殖をする。
メスは一人で子供を育てる。複数の子供を舐めてキレイにし、乳を飲ませ穴倉に隠し、飢えながら餌を取る眼差しを映し出している。

「よくゆーじゃん。犬型とか猫型とかさー。そういうので言ったら、スクアーロって本当は猫だよなー?」

隣でファッション雑誌をめくり終わったルッスーリアが、新聞に視線を落としながらそれを聞いている。

「そうねぇ。確かに、始めてみたときは子猫みたいだったわ。跳ねッかえりで身軽で、毛並みもぴんぴんしてたわ」
「本質が猫だよなぁ。……ホントは」

画面ではケモノが数日続いた雨の後、ようやく巣穴を出て狩りに向かった姿を追っている。
飢えたケモノの背中は鋭い。ふらふらになりながら、それでも狩りを成功させて、獲物を食べて巣穴に戻る。他の動物も飢えていて、ハイエナに横取りされる可能性は高かったけれど、幸い満足するまで食べることが出来たケモノは、日暮れになって巣穴に戻る。
その姿に気高さを、感じてしまうのは気のせいかもしれないけれど。

「ベルちゃんは猫っぽいけど犬かもしれないわね」
「んなわけねーだろー。王子は高貴な猫なの」
「怠惰ですもんねぇ…、猫の代名詞みたいなもんじゃない」
「なんだよー猫が仕事しなかったからペストが流行ったんだろー? 仕事してるじゃん、ちゃんと」
「でもほとんど寝てるじゃない」
「肉食獣が勤勉に仕事したら、獲物がなくなるだろー?」
「そうねぇ……あら、だから狩りをしすぎてるのかしら」
「センパイがー?」
「犬の生活が長すぎたのかしら」
「犬のふりしてるだけじゃね?」
「今まではね。今は、狗――に、なろうとしているのかも、しれないわ」
「そういえばさ」

新聞のコラムはフランスの育児制度について書かれている。殺し方を考えている自分たちが、そんなものを読んでいる不思議。子供は嫌いではない、とルッスーリアは思う。

「ボスって猫だと思う? 犬だと思う?」
「……ボス? ボスねぇ……今の生活は猫そのものよねぇ……」
「でも俺等の集団のボスだろ。それって犬とか、狼の集団じゃねぇの」
「どっちかっていうとライオンかもしれないわぁ」
「ライオンって猫じゃん」
「でも集団で生活するのよ、ライオンって。オスは何もしないの。トップのボスは何もしないで、言い寄ってくる敵を追い散らすだけ。メスとその子供たちが、餌取ってきたり子育てするんですってよ」
「へー?」
「ボスの命令に服従する、ってところは私たちは狼の群れかしら」
「だからセンパイも必死に犬の振りしてるわけ?」
「そうかもしれないわねー」

ふうん、納得したのかしないのか、怠惰の王子はルッスーリアに向けていた顔を、テレビ画面に戻してしまう。画面では巣穴に残った子供が一匹、敵に見つかって殺されたのを見下ろし、一晩抱いて寝ている姿を映している。

犬のふりをしつづけていて、猫は疲れないのだろうか。猫は命令を効くのも、指示通りに何かするのも、本当はあまり得意ではないのではないだろうか。
猫は爪を研ぐことを忘れたら歩けなくなるという。体に刃を帯びたまま、その刃を研ぐのは、研ぎ続けるのは、それは一体どんな心地だろう。

「今頃どこにいるのかなー」
「さあ。今日の仕事は国内だから、あさってごろには帰ってくるでしょう」
「ボスは本当は犬なんじゃないのかな」
「なんで?」
「センパイがいないとなんか静かじゃん。ごはん食べても、全然おいしくなさそうだし」
「スクちゃんが飼い主ってこと?」
「…そうじゃないけど、……」
「どっちが本当は飼い主なのかしら」
「ボスが主人でセンパイが犬じゃないのー?」
「そうだといいわねぇ」

そういいながらルッスーリアは雑誌を閉じる。テレビの画面では、死んだ子供を一晩抱いて気が済んだのか、朝には生き残っている子供を連れて巣穴を移動する親の背中を写していた。

「センパイって犬だったらセッターとかじゃねー? 足長いし」
「そうねぇー。そんな感じだわー」
「まぁでも鮫だから、そんなに頭よくねぇんじゃね?」
「駄目よ、本当のこと言っちゃ」
「ヒャハハ!」

階上の部屋ではお気に入りの犬がいなくて寂しい飼い主が、無聊を慰めるためにしゃかりきになって仕事を片付けているのだろう。そんな飼い主の様子を、おそらく犬はけっして見ることは出来ないのだろうけれども。

「犬でも猫でもいいわ、必要なのは愛情だもの。スクちゃんはいいコでしょ、手入れして綺麗にしてあげてるわ」
「だーねー」

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2月22日に上げようと思ってたんですがすっかり過ぎてますw間抜けすぎるwww

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思い出にもならない

「気分どうだい、ボス」
「いいわけあるか」

椅子に座ったままのザンザスの顔は見えない。
赤ん坊はふよふよ、宙に浮いたまま近づくけれど、必要以上に近づいたりはしない。そんな無茶なことはしない。
執務室のカーテンは開けられることがない。窓の外に顔を見せるほど、安全な場所にいるわけじゃない。窓ガラスは防弾で、普通の銃弾くらいははじくけれど。ボスの部屋はアジトの最上階で、外から部屋の中を覗き込むことは出来ないし、見える範囲に建物はないから、狙撃される恐れは普通は考えられない。
けれど部屋は薄暗い闇の中、ぼんやりともされた明かりの中で、いっぺんに何歳も年をとったような顔をした、暗部の王が空を見つめている。

「さて、継承式だけど――、ボスは欠席ってことでいいよね。ルッスとレヴィは残すよ。ボクが幻影を作っておくから、多分大丈夫だと思うけど」
「勝手にしろ」
「まぁ、僕がいま何を言っても無駄だと思うけど」
「おまえは無駄なことが嫌いだと思っていたが」
「嫌いだよ。でも」

アルコバレーノのおしゃぶりはまだ、マーモンの手元にはある。あるけれどもしかし、これはもう「抜け殻」だ。アルコバレーノの力は以前と変わらず使えるだろうが、しかしこれの本質が変化していることを、マーモンはもう「知っている」。
知っていることを知っている。どちらが先なのかなんて、意味はないことだ。
けれどそれに意味を求めたがる。それが人間というものだ。

「まぁ気にすることはないよ。ボス。十年間の記憶なんて、たいしたことじゃない」
「たいしたことじゃないだと…」
「そう」
「これのどこがたいしたことじゃねぇといえるんだ!」

ザンザスがぎりっを拳を握り締める。手のひらに食い込むほどの指の跡。
いまだ軟禁状態にあるこんなときでさえ、爪の手入れを欠かさないから、手のひらに傷をつけるようなことはないのをマーモンは確認する。
懸命に今の立場にふさわしい人間になろうと努力している姿が垣間見えるのはそんなときだ。それを少し、マーモンはまぶしいような、悲しいような気分で眺めてしまう。
それは彼の中にある青さ、若さが自分にはまぶしくて、そして苦いものなのかもしれない。

「あのカスどものために俺が一緒に戦っているなどというクソ気味悪ぃ記憶のどこが、たいしたことじゃねぇだと!? ボンゴレの本部があの白い気味悪い男にいいようにされていたりする記憶なんて俺によこして、一体何してえんだ…アルコバレーノってやつらは」
「消してしまいたいんだろうね。未来の、あるルートを」
「消す?」
「記憶なんてたいしたことないんだよ、ボス。あれは確かに十年後のみんなの記憶だけれど、そんなもの、覚えていられるわけがないんだよ」
「…なんだと…?」
「ボス、昨日何をしたのか覚えているかい?朝ごはんのメニューは?昼は?昼食の後何をした?読んだ本の中身は覚えている?」
「昨日…? そんなこといちいち、……!!」
「そう、昨日のしたことなんか全部覚えている人なんかいないだろ? それと同じなんだよ、十年分の記憶なんかあったとしても、そんなもの、みんな忘れてしまうんだ。すぐにね」
「どういう意味だ?」
「ボス、今覚えていることをなるべく細かく、紙に書いてみるといい。そして寝て起きてみれば、すぐにわかるよ」

その言葉の意味に、ザンザスは眉間の皺を深くする。

「今はその悔しさを覚えてるだろう。十年の間の口惜しさも、まるで昨日のことのように覚えていられることだろう。……ルーチェは酷い女だからね、相手を選んでいるんだよ。大空の属性の人間には、一番多くの「情報」を与えているはずだ。ボスには、今は全部残ってるはずだ。…たぶん、スクアーロもね」
「………」
「でもそれは、急いで覚えたテストの問題と答えみたいなものだ。試験が終わったら忘れてしまう程度のね。十年分の記憶を全部一気によこすなんて、それこそ負荷もいいとこだ。壊れない相手にそれを選んでいるのが、彼女のずるいところだとボクは思ってるけど」
「御託はいい、結論を言え」
「そんなもの、すぐにみんな忘れちゃうってことさ」
「……!!」
「忘れてしまうだろうってことだよ。たぶん、みんな、ほとんどのことを忘れてしまう。寝て起きてを数回繰り返したら、もう、なかったことみたいに薄まってる。そういえばそんなことがあったな、くらいにしか覚えていられないと思うよ」
「覚えていられない…?」
「そう。たぶん、脳が負荷に耐え切れないんだ。いっぺんに与えられた負荷が大きすぎてね。処理しきれないから、とりあえず、『忘れる』。思い出さないことが多いと思うけどね」
「ボス、…十年後のスクアーロはどうだったか、覚えていたいのかい?」
「あんなカス鮫がどうなっていようが知ったことか」
「そうだね。忘れられるなら、忘れたほうがいいと思うよ。君たちはこれからなんだし、――何も、本当は始まっていないんだからね」

そう、あれはただの誰かの記憶。自分ではない自分の記憶。
自分ではないのだ。

「これからも何もあるか。終わったんだ」
「終わって、これから始まるんだよ、ボス。これから時間がもう一度始まる。思い出になるのは今からだよ。別の次元の時間じゃない」

マーモンは言いながら、しかしそれは真実ではない、と思っていた。
記憶は薄れてしまうことだろう。それは確実で、確かなことだ。人間はそうたくさんの記憶を、いつまでも鮮明に覚えていられるものではない。

「誰かの記憶に支配されるなんて、まっぴらだろう?」

そういったマーモンを見て、ザンザスが少しばかり黙り込む。その目にはかすかに、野望の熾き火が見えるような――そんな気がする。

「これはボクの勝手な想像だけれど、記憶の鍵になるのは自分じゃない。自分の記憶にもっとも多く登場する人物こそが重要なんだと思う。ボス、スクアーロを見てるといい。あれがボスの記憶を変える、鍵だよ」

ザンザスの記憶は八年が綺麗に抜けている。だから彼の記憶には欠けがない。
十四才のスクアーロと二十二歳のスクアーロは繋がっている。そこにいくら反古があったとしても、それが現実で、今のザンザスの記憶だ。ザンザスの記憶で繋がっているものは、ヴァリアーの幹部たちしかいないのだ。

「十年後にもそこにいるなら、彼こそがボスの記憶ってことだね」
「あいつがか」
「そうだね。不本意かもしれないけど」
「ろくでもねぇな」
「そうかもしれないね」

でもそれは、案外悪くない選択肢じゃないのかな。

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ひばりん!ひばりん!

ようやくジャンプゲット…NEXTは迷っているうちに買うの忘れていました。買わねば。
んでようやく噂のひばりんですよ。
いやー凄い!たまりません!
始めて
ひばりんがカッコイイ
とマジで思ったです……!!!
ひばりん!
すばらしい!
かっこいい!

もう何か突っ込みたいことが死ぬほどあるんだけど、それを全て差し置いて、さすがひばりん!ガイキチ過ぎて素晴らしい!!
女子でも全然加減する気がないところが、さすが地回り893ですな…しかも腕章取り合いバトルって…!ステキ!素晴らしい!!
ところでひばりんは実は魔女っ子だよねー?って思ってたんですが、今回それを確信しました。
小動物を連れているのが魔女っ子の条件だと思ってましたが、小動物と一緒に服装が変わる…というか変身しちゃうなんて、魔女っ子以外なんだというのでしょう(笑)!
ヒバードとロールという小動物を二匹も連れているひばりんはやはり魔女っ子だった…!!
魔女っ子なのできっと魔法のスティックならぬ、魔法のトンファーで女子の服をぼろぼろにしてくれるんじゃないかと期待しています。でも鈴木は悪の女幹部というよりは美形悪役の役回りだよね。おっぱいぽろりもパンツも見せない無敵なあたり、美形悪役でキメキメで行くのではないかと思うとワクワクします。

風紀委員長が昔の少年マンガで言うところの番長の役回りになっているってあたり、なんだか時代の流れを感じますなー。あ、でも昔の少年マンガでも、風紀委員長が番長だったって話は結構あったな…その時代の前は風紀委員長って番長の敵だったんですけどねー。

しかし原作が最大手とはよく言った…WJってそんなんばっかやなw

あっ忘れていたけどクロームちゃん…!!つかDさん!Dさん!おめー何やったん…合体したんかよー!と多くの男子の妄想を書き立てるエロセリフありがとうございます。
まぁあの人たち精神で合体できちゃうからなー。そっちのほうがよほどエロくてグロいよね。
髑髏ちゃん一体何をされたの!? そして誰も彼女の心配をしていないのが一層酷い。心配してくれるのは水槽でこぽこぽしてる南国果実だけだなんて…(;∀;)

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Gioisca, rabbia, umorismo e pathos

獣には感情がない。

子供は獣だった。すべてのこともは獣だったが、その子供は特に獣だった。それはそれは鋭い牙を持っているけもので、大きな敵と戦うことを厭わない勇敢な獣だった。
獣は勝てない戦いはしない。絶対に勝てる戦いを絶対に勝てる方法で戦う。そして勝つ。負けることは死ぬことだと知っているから、負けるようなことはしない。奢らない。自分の運命を他人の手に譲り渡さない。獣の血を持ち、獣の魂を持っていたから。

獣が始めてしったのはよころび。勝利を喜ぶという感情を始めて知り、それを快感とすることを知る。子供は獣になる。それを「よろこぶ」ことを知る。知ってしまう。
銀のたてがみの見事な獣はそこで人の感情を知るけれど、それは人のためのものではない。よろこびはわたしのもの、よろこびはひとりだけのもの。よろこびは獣だけのもの、よろこびは自分だけのもの。子供はそれを知る。そして少し人になる。


獣は嵐の炎を見る。始めてみた炎に恐れ慄く。炎は獣の見たことがないもの、人の世界のもの。獣は人の世界を知る。始めてみた炎を知る。
そうして獣は知ってしまう。知ってはいけないものを知ってしまう。
よろこびだけを知っていればよかった、まだ獣でいられた。いられたのに、知らずにいたのに、それなのに。

獣はヒトになってしまう。人の炎でヒトになる。それはプロメテウスの炎、ピグマリオンに吹き込む原始の炎である。
炎が氷を生む。氷はよろこびを変えてしまう。

けれど獣は所詮獣、ヒトに向ける感情を知らない。
炎の原動力がなんであるかを、理解することが出来ないのだ。

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子供に人気のかがやくおうち

家の明かりは外に漏らさない。

暗がりで生活するのは苦ではない。人よりよほど夜目が利く二人は、日本人よりは暗闇に強い。淡い色の虹彩は光に弱くて、代わりに夜の暗がりのほうが楽は楽だ。それは若い時分からの習いのようなもの、年を取った今でも、目をつぶって家の中を歩くのに支障はない。

けれどその屋敷は冬のひと時、白く輝く明かりに覆われることになる。日本の夜は明るいと、極東の国にやってきた当初、二人はそう思っていたが、通りを外れると急に、夜は深くなる気配がある。
ハロウィンが終わった途端、家の表にともされる明かりに、不信を抱いたのは仕方ない。個人の家でそういうことをするということはあちらではほとんどない。街中では、公共の街灯以外には看板を照らす明かりのワット数や色にも厳しい規定があることがほとんどであるし、田舎でそんなことをすれば、たちまち盗まれたり壊されたりすることが多いからだ。

「……日本って国は平和なんだな」
「そうかもなぁ」
「うちもやるかぁ?」
「なんでそうなる」
「…あんた、すごくやりたそうだぜぇ」

瞳の奥で湧き上がる好奇心を見透かされて、赤い瞳の男が目を見張る。銀灰の眼差しは楽しそうに、普通の家の植え込みに飾られた、白と青のLEDの明かりを映して光っている。
水面の表に、ダイヤモンドが輝いているよう。

「…見てぇか」
「やってみるかぁ?」
「どんなになるか、気にはなるな」
「やってみようぜぇ。植え込みの剪定はだいたい終わってるしよぉ、小さいのは終わったらすればいいだろぉ」
「剪定してんのか」
「してるぜぇ。日本の落葉って遅いんだなぁ」
「色が変わるのがすげぇ」
「そうだなぁ。気が違うから色も違うぜぇ」
「今年は綺麗だった」
「暑かったし、急に寒くなったからなぁ」

そんなことを言う隣の男の肌が少し乾いている。
異国の水に洗われて、髪の色が少し濃くなったような気がすると夏場は思っていたけれど、今は少し、肌が薄くなったようだ。
甘い匂いのボディクリームが体臭と交じり合って、澄んだ夜の空気のようになる。寒いのでもっと近くで暖を取ろうと抱き寄せた体から、冷たく饐えた青い香りがする。

「今日買えなかったもんは明日買いに行こうぜぇ」
「面倒だから通販で頼め」
「みかんは来年届くように頼んであるんだけどよぉ、少しだけ買おうぜぇ」
「食べてぇのか」
「この前、加奈子さんから貰ったもらったみかんが、もうそろそろ終わりそうなんだぁ」
「買ったみかんは甘すぎる」
「いやかぁ?」
「りんごにしろ」
「日本のリンゴはでかくて食べきれねぇだろぉ」
「俺が剥くからいい。買え」
「そっかぁ? だったらいいけどよぉ、あんた皮剥くのうまいもんなぁ。あとなんか欲しいもんメモしておけよぉ、明日市場に行くんだからなぁ」
「日本の冬は忙しねぇな」
「クリスマスが終わったら一瞬でお正月だぜぇ」
「カミサマが来るんだったか?」
「年神さまってのが来るんだそうだぁ」
「日本じゃなんでもカミサマだな」
「ホントになぁ」

夜の散歩をしながらあたりの、家の庭のあかりを覗く。朝が寒いのでなかなか散歩が出来ず、最近は夜になってから歩くようになった。表通りから少し中に入ったこのあたりは、夜はほとんど車が通らない。住宅街が途切れた先は畑と田んぼが続いているが、冬はあたり一面、茶色の土野原で何もない。夜はまっくら、懐中電灯で足元を照らさなければ危ないほどの暗さ。遠くのグランドの明かりが唯一の光源、しかしここ最近はそれもない。

「明日の夜はケーキ焼くぜぇ」
「チキンは俺が焼く」
「そういえば昼間、ヒバリが来てお歳暮置いてったぜぇ」
「そうか。草壁か?」
「本人が来たぜぇ。今日は十二件回るって言ってたぜぇ」
「あいつも勤勉だな」
「顔見るのも仕事だって言ってたぜぇ」
「なるほど」
「なんだろうなぁ。楽しみだぜぇ。雲雀の趣味はいいからなぁ」
「そうか」


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赤い瞳の男は元来真面目な性質だった。銀の髪の男は派手なことが好きで、面倒見がよくて楽しいことが好きだ。
なので二人して始めて冬の家の飾りつけは、初年こそおそるおそるという感じだったが、翌年はかなり派手になった。
どこからかぎつけたのか知らないが、雲雀恭弥が人出を貸してくれて、面倒な飾りつけの一部をやってくれたりしたのだ。
二人の屋敷は通りから少し入ったところにあるが、前に家がなく、あたりは畑で見通しがよいので、少し離れたところからもよく見える。
夜は暗くて街灯がないせいもあって、暗闇の中で光る建物は夢のように美しい。
それは夜鳴きする子供をあやしに来た母親を慰め、犬を散歩させながら一休みする母親を楽しませ、塾帰りの子供が車窓から目印にする、そんなものになっていることを、屋敷の主の二人だけが知らない。

家の明かりが漏れないように、遮光の分厚いカーテンを引いてその時期は夜を過ごす。冬は朝から薪ストーブをつけて、ひがな一日それをつけることにしている。吹き抜けを通って二階を暖めた空気が家中を暖め、分厚い壁が外の空気や音を遮るしくみ。
湯たんぽと人肌でシーツをあたためる夜が過ぎる。

「ほら」
「おおっ、ありがとなぁ。やっぱりりんご剥くのうまいなぁ」
「うさぎにしてやろうか?」
「それは風邪引いたときにとっておいてくれぇ」
「忘れんなよ?」
「そもそも風邪なんかひかねぇぞぉ!」
「ナントカは風邪引かねぇって話だしな」
「なんだとぉ!」

寒くなると肩が痛くなるとは、決して言わない連れ合いと一緒に、年が明けたら温泉とスキーに行く予定を思って、赤目の男は目を細める。子供のように真剣に一途に、しゃくしゃくとりんごを齧る銀目の男がそれを見て、嬉しそうにはにかんで答える。

冬の夜は長い。

長い夜を隣に相手を抱き寄せて、すごす年月ももう、四十年が過ぎようとしている。

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たぶんスクアーロは11月からパネトーネに入れるキルシュ漬け作ってる(ルッス秘伝レシピ)
メリークリスマス!

雲雀さんは並盛の元市議会議員で今は県議 そろそろ知事に出てくれって言われてるかもしれないww(でも県議にあまり興味がない。並盛愛しすぎてw)

拍手[8回]

好きな言葉は挑戦だってさ

「貴様なんだこれは!」
「なんだこれはってみてわかんねぇのかこのクソボス!」
「わかるか!なんだこれは!」
「御曹司はそんなにもの知らずなのかぁ!? ブラだよブラ!てめぇは女の乳も見たことがねぇのかよ! そんなにヤリまくってそうな顔してるくせに!」
「はぁ!? こんな薄いのがブラなわけねぇだろ」
「はぁあ? ってそりゃこっちのセリフだぁ! こりゃちゃんとしたブラだぜぇ! 御曹司は見たことがねぇのかよぉ!」
「こんなもんがか!?」
「こんなもんっていうなぁ!」
「……まぁ、おまえの貧相なブツには適当な代物なのは間違いないな」
「なんだよそのかわいそうなものを見る目は!」
「……仕方ねぇ」
「ため息つくなぁ!」
「揉んでやれば少しは大きくなるだろ。んで、そんな色気も素っ気もねぇもんつけるんじゃねぇ」
「何言ってんだぁ御曹司? 剣振りまわすのに後ろホックのブラなんかすぐ外れちまって役にたたねぇだろぉ!」
「(…そうなのか?)」
-----------------------------------
「少しは色気のある下着をつけてるかと期待してたんだが…」
「なんだとぉ!? かわいいじゃねーか! ちゃんと色はブルーとピンクのチェックだぞ!」
「問題はそこじゃねぇ! なんだこの色気も素っ気もねぇ下着は! しかも相変わらず貧相じゃねぇか…少しは育ったか…?」
「少しはとかいうなぁ!これでも八年前よりはあるんだぜぇ! ああ!?」
「…そんなレースもついてねぇ薄いブラで迫られても」
「なんだとぉ!? 動いてもズレねぇレーサーバックでフロントホックなんだぜぇ! 片手で外せるから左手使わなくても便利なんだぜぇ?」
「…そういう理由か?」
「普通の下着だとうまくホックはめられねぇんだよ! 日本の店で買ったんだけどすげー便利なんだぜぇ! 日本に行くたびに買ってるんだぜぇ」
「…まぁそれならしょうがねぇが、……しかしもうちょっと、こう…」
「…あんまでかいと腕を振るときにぶつかって不便なんだぜぇ! そういや昔、ペルシャの女戦士アマゾネスが、弓を引くのに邪魔だからってんで、右の乳切り落としたって話があったよなぁ?」
「おまえに落とせるほどあるのか」
「なんだとぉ!!」
「屋敷にいるときはもうちょっとちゃんとしたのをつけろ」
「…ちゃんとしたのってなんだぁ?」
「もうちょっと揉んででかくしてやるか」
「おいおい外せないからって金具弄るのやめろぉ! 壊したら弁償してもらうぞぉ!!」
「(チッ)」

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「ぎゃあああああ」
「うるさい黙れ」
「やめろぉおめぇ何してんだぁやめろぉおおお」
「ええいいい加減俺も我慢できねぇ! おまえもいい加減ちゃんとした下着の付け方を覚えろ!!」
「うがぁああんな力入れて掴むなぁああ押すなぁああああ」
「アンダーバストはちゃんと平行にしろ! ずれたくないからってきつくするな! かえって動く! そのまま体を前に倒して、横から肉を掴め!」
「いてぇよ何んな力入れて掴んでるんだよぉおお」
「おめぇの乳の肉がどんだけ横に流れてるかって話だこのドカス!」
「うおおおお」
「脇の下から掴んで押し込め!アンダーの上にバストを乗せるつもりで入れろ! 押し込むんじゃねぇ!」
「ひぃいい」
「これで体を起こせ!ほら、脇がこんなにツレてるじゃねぇか。おまえの体に全然あってねぇだろ!」
「……ホントだ」
「いったいいつまで昔と同じサイズのままでいやがる」
「あー、…あれ?」
「年に一度はサイズ計ってフィッテイングしろ。胸は特に替わりやすい」
「あー、ホントだぁ…」
「とにかく明日新しいの買いに行くから今までの下着全部捨てろ」
「えええ!?」
「どんだけ俺がおまえの乳揉んででかくしたと思ってるんだ! せめてその成果くらいは見せろ!」
「えええ!? そんなにデカくなってんかよ!?」
「なってるだろ! もうAカップに入ってねぇのか見えねぇのか、おまえの目は節穴か!」
「おお…!」

「サイズは80Cになりますね。こちらなどいかがでしょう」
「フィッティング終わったものは全部買うからどんどん試着しろ」
「ええええ!?マジでか!? つかそんなに買わなくてもいいぜぇ…? つかそんなにデカくなってたんだ俺…」
「下着は目的によって用途が違うんだから数はそろえておけって何度言ったらわかるんだ」
「えー、…?」
「ルッスに口を酸っぱくして言われてるだろ…」
「……あー、……わかったぁ……もう一回よく聞いとく……」

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ボスちゃんのバストアップ計画(予想外に長期間)
にょたに挑戦の割にいろいろ酷い
サイズは欧州表記(フランス表記)なので、日本サイズだと65Cくらいなカンジで。

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